患者と同じ点変異をもつ脊髄小脳変性症14型原因遺伝子(Protein kinase Cγ;PKCγ)をGFPとともに生後6日のマウスのプルキンエ細胞に発現させ、生後25日に発現プルキンエ細胞の変化を検討した。形態的には明らかな変化を認めなかった。パッチクランプ法で機能を調べたところ、余剰な登上線維が残存しており、代謝型グルタミン酸受容体を介するTRPC3電流が増大していた。よって発現プルキンエ細胞ではPKCγの機能が阻害されていると考えられた。プルキンエ細胞に変異型PKCγと野性型PKCγを発現させたところ、変異型PKCγが野生型PKCγを巻き込んで凝集塊を形成することがわかった。 次に平行線維一プルキンエ細胞シナプスで誘導される長期抑圧現象(Long-term depression ; LTD)の発現を調べたところ、LTD発現も阻害されていた。LTD発現にはPKCαが重要であることが報告されている。そこで、PKCγとPKCαの相互作用について検討した。プルキンエ細胞に野生型あるいは変異PKCγ-GFPと野生型PKCα-DsRedを発現させて、脱分極刺激に伴うPKCγ-GFPとPKCα-DsRedの膜への移動を調べた。変異型PKCγ-GFPと野生型PKCα-DsRedの共局在は認められなかった。脱分極刺激を与えると、変異型PKCγ、野性型PKCγ関係なく、PKCα-DsRedの膜移動が観察された。しかし、変異型PKCγを共発現させた場合、野性型PKCγ共発現の場合に比べて、PKCα-DsRedが細胞膜に滞在する時間が有意に短いことがわかった。
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