研究課題
L-フェニルアラニンとL-アスパラギン酸から形成される環状ジペプチド誘導体は、ゲル化剤の基盤として有用である。環状ジペプチド誘導体に分子量の異なるポリジメチルシロキサンや分岐アルキル鎖を導入したゲル化剤は、シリコンオイルや食用油をゲル化するオイルゲル化剤として機能した。2010年度は、末端にOH基を有するアルキレン鎖を導入した環状ジペプチド誘導体の性質について詳細な検討を行なった。異なるアルキレン鎖長を有する環状ジペプチド誘導体のうち数種類は、水やアルコールといった極性溶媒をゲル化することが分かった。これらの主なゲル化駆動力は、ポリジメチルシロキサン型ゲル化剤と同様の水素結合であることが分かった。その一方、貯蔵弾性率G'を指標として測定した温度依存性sol-gel転移挙動は、2つのゲル化剤の間に特徴的な違いを示した。20℃から80℃までの昇温・降温過程において、ポリジメチルシロキサン型ゲル化剤から調整したゲルは安定したG'の値を示した一方、OH基を有するアルキレン鎖型ゲル化剤は35℃付近で劇的な変化を示した。これは体温近傍での熱によるsol-gel転移を意味する。また、せん断や振動といった力学的な刺激によってgel-sol転移を生じるチキソトロピー性も観察された。以上の結果から、OH基を有するアルキレン鎖型ゲル化剤は温度に依存したgel-sol転移だけでなく、等温可逆的なgel-sol転移を示す機能性ゲルとしての可能性が示唆された。
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ネットワークポリマー、合成樹脂工業協会
巻: Vol.31, No.6 ページ: 308-315
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