バングラデシュにおける大河川(ポッダ川)の侵食されやすい河岸や中洲に居住する人々の生業や生存戦略についての既存研究文献を広く渉猟し、とりわけ関連する2冊の本を丹念に読み、これまで明らかになっていること、今後の研究課題を確認した。 また、ポッダ川沿いの調査地に赴き、1)河岸侵食のため村ぐるみで移動を余儀なくされた村、2)河岸に近い中州上の村、3)河岸から非常に遠い中州上の村の3つの村を調査村として選定し、まず各村の全世帯の悉皆調査を実施した(合計で242世帯)。そこでは、世帯員構成、主な職業、副業、教育水準、家屋の状況、農地所有、小作、農産物の生産と販売、家畜保有、飲料水用井戸の保有、ボートの保有、その他耐久消費財の保有、金融事情といった基礎的情報を収集した。全世帯のデータをコンピュータ入力し、簡単な集計を行った。さらに、村でグループ・ディスカッションの場をいくつか設営し、住民の直面する問題などを直接、把握した。 さらにダッカにおいては、バングラデシュ工科大学、地理情報センター、バングラデシュ統計局などを訪問し、必要な統計、地図、ポッダ川の水文データなどを入手した。 以上の一連の作業を通じて、侵食されやすい河岸や中洲といった特殊な地域に居住する人々の生業および社会経済状況を把握し、またその生存戦略を理解するための基礎作業が終わったことになる。 今後は、以上の基礎データをもとに、やや詳細な分析を加えるとともに、彼らの生存戦略により密接した仮説を導出し、それを現地調査によって検証していく予定である。
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