大質量星はその強力なエネルギー放出によって周りの星間空間へ多くの影響を与え、また最終的には超新星爆発によって重元素の源ともなる非常に重要な天体である。しかし、大質量星の形成過程には多くの謎がまだ残っている。大質量星形成過程を明らかにすることは天文学における最も重要な課題のひとつと言える。 質量が太陽の40倍を超えるような大質量星は、形成時に太陽の10万倍以上も明るく光る。その結果、光が最も吸収されるダスト蒸発面では、重力の100倍以上の輻射圧(光の力)がかかる。そして中心星がそれ以上、質量を増やすことができなくなると理論的には予想されている。しかし、観測的には理論予想を大きく超える太陽の150倍の質量を持つ星も発見されている。これを「輻射圧問題」という。 これまで多くの理論研究では計算領域を広くとるグローバルシ・ミュレーションが多くなされて来た(Krumholz et al.2009等)。グローバルシ・ミュレーションでは大規模な構造の理解は出来るが、空間解像度が低いという弱点がある。そこで私の研究の強みは「ローカルシミュレーションによる詳細な物理過程の解明」にある。 「動圧」はこれまで輻射圧克服メカニズムとして有力視されていたが、円盤降着を考えると「動圧による輻射圧克服は難しいということを私は示した。そして、新しい克服メカニズムとして「重し効果」と「自己遮蔽効果」という2つのメカニズムを研究している。「重し効果」については投稿論文としてまとめられている(Tanaka & Nakamoto 2010)。現在、「自己遮蔽効果」のより詳細な研究のため、シミュレーションコード開発を進めている。
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