研究課題/領域番号 |
10041017
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研究種目 |
国際学術研究
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応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
嶋田 義仁 静岡大学, 人文学部, 教授 (20170954)
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研究分担者 |
松田 素二 京都大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (50173852)
阿久津 昌三 信州大学, 教育学部, 助教授 (30201883)
和崎 春日 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (40230940)
赤坂 賢 京都府立大学, 文学部, 教授 (60099231)
日野 舜也 京都文教大学, 人間学部, 教授 (20014467)
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キーワード | アフリカ / 伝統王国 / 国民社会 / 国民国家 / 民主化 / 伝統と近代 / 植民地化 / 慣習法 |
研究概要 |
本研究の目的は、アフリカの植民地化以前に成立した伝統的諸王国が、国民社会形成の過程のなかで、どめように変化し、どのような変化してゆくかを比較研究によって動態的に解明することにあったが、ほぼ計画どうりの調査を実施することができた。現在アフリカは政治的に安定した地域でも民主化、構造調整などの激動期にあり、住民の国民国家や伝統王国に対する潜在的な評価が表面にあらわれやすい状況にあった。このことも、それぞれの調査研究を容易にした。特に、研究代表の嶋田は、ナイジェリアの政治的安定が明らかになったのを幸い、カメルーン、ナイジェリア、ニジェール、マリ4ケ国を訪問、13の伝統首長と会見することができた。また各国研究機関の研究者と接触、各国の研究事情を知るとともに、今後の研究協力の約束を得た。得られた新たな知見としては次の3点が重要である。(1)アフリカ諸国はどの国も複雑な地域事情を抱えているが、歴史の浅い国民国家体制は各々に応じたきめこまかな政策を実施できず、その統治体制は強圧的にならざるを得ない点があった。現地事情に通じた伝統国家はこの点を補完する役割を担ってきた。これを端的に示すのは、刑事事件は国民国家の法体制の下にあるが、慣習法がかかわる民事事件はほとんど伝統国家の司法にまかされているという事実である。(2)他方、伝統と近代化が二者択一的な問題ではなくなりつつあることもわかった。これは伝統王国側の傾向としても顕著で、近代教育や地域開発にたいする伝統王国の積極的な取り組みが目立った。また首長に選ばれる人物も、近代的知識を身につけた人物(銀行支店長や官僚経験者)のなかから選ばれる傾向がでてきた。(3)こうした伝統王国の役割に注目する現地研究者が数多く存在していることを知りえたのも新たな知見で、かれらのあいだには、伝統と近代を融合しつつ近代化をはたしたたとみられる日本の研究者との共同研究への期待がきわめて強かった。これにどのように応えてゆくかが今後の課題のひとつである。
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