研究課題/領域番号 |
10041033
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
笹川 孝一 法政大学, 文学部, 教授 (70178630)
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研究分担者 |
南 相瓔 金沢大学, 経済学部, 助教授 (50242540)
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キーワード | 外国人 / 移民・移民労働者 / 東アジア / 多文化教育 / 言語教育 / 日本語教育 / 多文化社会 / 多言語社会 |
研究概要 |
(1)1970-80年代以後急速に増えた韓国、日本、台湾、香港、マカオ、シンガポールにおける移民・移民労働者(外国人)の背景は、これら諸国(地域)と周辺諸国(地域)とのあいだでの経済、科学技術、文化、社会制度などでの格差拡大を背景としている。(2)教育活動をふくむ住民としての受け入れについては、シンガポール、香港のイギリス型=非血統主義型と日本、韓国、台湾における儒教型=血統重視型とに分かれ、それは、シンガポール、香港における国家(準国家)レベルでの制度(準制度)としての移民適応プログラムの存在と、日本、韓国、台湾、マカオにおける制度化の立ち後れ、NGO主導という、二つの傾向に現れている。そして制度化が遅れている場合、地球規模のネットワークをもつキリスト教系団体の果たしている役割が小さくない。(3)しかし、1997年以後の香港における血統重視傾向と、1990年代以後の日本・韓国における外国籍市民への地方参政権付与立法化のように、両者が交差する動きが注目される。(4)シンガポール、香港でも、移民に対する一定の制度整備に比して、移民労働者への対応はきわめて不十分な状態にある。この点では、日本での地方自治体と市民活動の一定の成熟、香港での地方自治制度を支える市民活動の未成熟という事情がある。(5)移民労働者の場合、出身国への帰国再適応課題もとくに子どもの場合に重要であるが、総じてエスニックグループの独自活動に依存し、受け入れ国政府等の積極的対応がないために、日系ブラジル人の子どもたちのように困難に直面している場合もある。(6)受け入れ国での文化的多元性と独自性との融合指向は、日本、台湾、シンガポールに見られ、これは中華思想、華夷秩序意識からの脱皮の動きとして注目される。その際、日本のアイヌ、在日韓国・朝鮮人、台湾の「九族」、香港のフィリピン人などの役割が注目される。(7)以上のような動向の成熟のためには、各国での「国民国家」「国民教育」の成熟が地方自治体、「個人」、「市民の学習権」の発展、東アジア文化の複合性認識を促すことが重要であり、これは中国をふくむ今後の東アジア全体にとって大きな課題となる。そしてこの点では、域内各国の経験を吸収しながら日本が自らの軌跡を整理して、適切なリーダーシップをとることが期待されている。
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