研究課題
基盤研究(B)
1)東アジアにおける移民・移民労働者の大規模な動きは、19世紀半ばのアヘン戦争以後に始まり、第二次大戦直後と、1980年代以後の今日第三のピークを迎えている。2)現在、この地域内で最も産業の成熟している日本と産業が最も未成熟なフィリピンとを両極として、〈発展途上国から先進国へ〉を基本的方向性とする人の流れができているが、近隣諸国間においては方向性が複雑化している。3)受け入れ側の事情としては、鉱工業・水産漁業等の労働力不足とともに家事労働者を求める主に中国系住民の志向をあげることができる。送り出しての事情としては、経済的サクセスストーリー実現の動機の他、開発独裁体制が続く中で「外国に出たい」と切に願うい中国人に顕著な動機とともに、英語能力が相対的に最も高く評価されている旧アメリカ領であることによって英語教育が最も徹底しているフィリピンのからの動きが特徴的である。4)受け入れ国において、教育的ケアは急速に前進している。香港ではアジア移民センターにおける一般情報提供、地域言語である広東語学習の教科書づくりや中国大陸からの移民に対する英語教育が、台湾では台湾人男性と結婚したインドネシア人等の配偶者とその子どもたちの中国標準語教育などが進みつつある。また日本では日本語学習支援にかんする交流活動、基本認識の整理、識字法等の法案作成の試みもなされるに至っている。ここでは、確実に多文化・多言語社会、市民社会の成熟へと向かっている。5)一方、言語的、文化的摩擦も依然として少なくない。その背景として〈中華思想〉というローカルなイデオロギーの役割を無視できない。文化概念としての〈中華文明圏〉を軸としてこの洗礼を受けれいない〈北狄〉〈南蛮〉などの人々を蔑視する基本的傾向に加えて、〈文化センター=西欧〉とする考えが加わり、差別を当然視する傾向も見られる。6)この傾向を克服するためには、各国経済の平準化と〈東アジア連合〉の実現が必要であり、また、この地域の伝統イデオロギーである儒学に内在する文化を理由とした差別感、老荘思想における自然主義の再評価など、新しい思惟形態の構築もまた、重要課題の一つである。7)また、活動交流の活発化、政府等への政策提言等の働きかけの強化のためには、国内、国外でのネットワークの強化が重要であるが、この点でフィリピン人と中国人のネットワークに相互扶助的要素が拡大している。
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