研究課題/領域番号 |
10041034
|
研究種目 |
国際学術研究
|
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
月本 昭男 立教大学, コミュニテイ福祉学部, 教授 (10147928)
|
研究分担者 |
山我 哲雄 北星学園大学, 経済学部, 教授 (80230332)
定形 日佐雄 プール学院短期大学, 秘書科, 教授 (40290332)
清重 尚弘 日本ルーテル学院大学, 教授 (50097143)
佐藤 研 立教大学, コミュニテイ福祉学部, 教授 (00187238)
石川 耕一郎 昭和大学, 教養部, 教授 (50232252)
|
キーワード | ガリラヤ湖東岸エン・ゲヴ遺跡 / 列柱式建造物 / 古代イスラエル時代 / 北イスラエル王国 / ヘレニズム / ガリラヤ地方 / ローマ・ビザンティン時代 |
研究概要 |
すでに、二層にわたる鉄器時代の列柱式建造物の存在が確認されていたが、本年度の調査によって、上層の列柱式建造物の西壁の基礎部分が発見され、この建造物の規模が確定された。すなわち、その芯芯間距離は東西17.9m、南北17.6mと判明した。また、列柱の存在のみで、規模は不明であった下層の列柱式建造物についてもまた、その基礎石列から、ほぼその輪郭が明らかになった。すなわち、それは列柱棟三連が横並びの建造物であって、東西約20m、南北約27mの方形であったと思われる。時代は、上層の列柱式建造物が出土土器からイスラエル北王国末期(前8世紀後半)であることが確認されたが、下層の列柱式建造物は出土土器が少なく、未だ限定できない。 この列柱式建造物の機能に関しては、類似の建造物がすでにイスラエルの13の遺跡から出土しており、世界の聖書考古学者たちによって、厩舎、貯蔵庫、兵舎、バザールなどの見解が提起されてきたが、未だ、結論を得ていない。われわれの遺跡で発見された列柱式建造物についても、とくに建造物内の出土遺物が少ないため、未だ最終的な結論に達していない。ただし、この遺跡は古代イスラエル時代の主要交通路に面しており、当時の国際的物流と関連する施設であったと思われる。 列柱式建造物の東側の二重城壁については、その北側延長部分を発掘し、城壁が直線的に北に延長していることが確認された。ここから、われわれの発掘区域は人工的に造られた城塞であった可能性が強まった。 その城壁部分の上層からは初期ヘレニズム時代の複合住居が鉄器と共に発見された。初期ヘレニズム時代、エン・ゲヴがデカポリス(「10の町」)のひとつであったヒッポスと深い関係にあったことを予想させる結果となった。 今後は、下層列柱建造物の時代と城塞構造の確認およびヘレニズム時代層の全体的規模のための発掘調査を行う必要がある。それによって、エン・ゲヴ遺跡の最終的な考古学的編年を確立し、北イスラエル王国とアラム(現ダマスカス)との抗争の焦点であったアフェク(旧約聖書「列王記上」20章)との同定も含め、この遺跡の歴史的・文化史的意義を明らかにしてゆかねばならないであろう。
|