研究概要 |
平成10〜11年度は,1)ガリラヤ湖東岸に位置する遺跡エン・ゲヴ(鉄器時代〜ヘレニズム時代)の発掘調査,2)ガリラヤ湖周辺の宗教遺跡踏査,を集中的に行った. エン・ゲヴ遺跡発掘調査では,平成2〜4年度の発掘調査によって出土した列柱式建造物(前8世紀)の下層に更により規模の大きい列柱式建造物(前9世紀)の存在が確認され,ケイス・メイト式城壁(南北方位)が直線的に建造されていることも判明した.ヘレニズム時代層からは複合建造物跡および石灰窯跡(年代未決定)が出土した.これらの建築遺構は,出土土器と共に,ガリラヤ湖東岸の宗教文化史的研究に不可欠な資料を提供することになった. 宗教遺跡踏査では,まず,福音書に言及されるイエスの活動領域の文化地誌的調査を行い,イエス運動の社会史・文化史的背景(とくにヘレニズム文化地域との関係)に関する資料蒐集につとめた.また,ヘレニズム・ローマ時代からビザンティン時代にかけて建立されたユダヤ教シナゴーグ跡およびキリスト教教会堂跡の主なものを踏査し,その分布と様式を調査確認した.これらの調査により,この時期のガリラヤ湖周辺地域の的宗教文化の複合性が明らかになりつつある.
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