研究分担者 |
須田 一弘 北海学園大学, 人文学部, 教授 (00222068)
山尾 政博 広島大学, 生物生産学部, 教授 (70201829)
後藤 明 宮城学院女子大学, 人間文化学科, 教授 (40205589)
田和 正孝 関西学院大学, 文学部, 教授 (30217210)
口蔵 幸雄 岐阜大学, 地域科学部, 教授 (10153298)
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研究概要 |
本研究の対象とする東南アジア大陸部の低湿地は,サンゴ礁,マングローブ,低地林,汽水域から河川・熱帯湖沼を含み,地域住民だけでなく政府や企業によりさまざまな形で利用されてきた。本研究を通じて,(1)湿地における天然資源が、採集狩猟民から漁撈民,農耕民,半農半漁民を含むさまざまな民族集団によって開発・利用されてきたこと,(2)歴史的に資源の利用形態が過去100年の間に大きく変容してきたこと,(3)資源の利用形態は,自給目的の場合から地域市場,域内市場,域外市場,グローバル市場まで多重的な流通機構を媒介する場合までを含むこと,(4)天然資源の管理手法において,従来の国家による上からの規制にくわえて,共同体基盤型の管理方法だけでなく,政府と共同体による共同管理(co-management)が90年代以降に新しく実施されてきたことを明らかにした。注目すべきは,河川・湖沼域から汽水域,沿岸域における資源利用が,(1)ほぼ同様な商品化過程を経過してきたこと,(2)各水域ごとに独自の変容過程を経てきたこと,(3)各水域間の対立が増加してきたことを挙げることが出来る。メコン河集水域では,ダム開発・森林伐採などをめぐる環境問題が深刻化してきた。ベトナム沿岸とタイ南部の海水・汽水域の湿地では,多様な底生小動物群集を採捕する小規模な活動が,エビ養殖池やスズ鉱山開発、農地・工業用地への転換などを通じて,衰退ないし単純化する変化が生じてきた。タイや、マラッカ海峡域の沿岸部では、底生の小型・中型動物群集を漁獲する漁撈が漁船の近代化、漁獲物の商品化、グローバル化により漁獲努力量の増加により,資源自体の枯渇と漁業紛争の激化を招いている。淡水域,汽水域,沿岸域を含む総合的な観点からの生態学的な資源管理(=eco-management)を進めることが急務であることを明らかにした。
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