1997年の気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)では、国際協力による温室効果ガスの排出削減対策のメカニズム(京都メカニズム)の一つとして、主にOECD諸国と途上国間の国際協力のもとでの温室効果ガスの排出削減プロジェクトによって生じた排出削減量の取引:クリーン開発メカニズム(CDM)が新たに定義された。温室効果ガスの排出削減技術の技術移転が伴うCDMという仕組みが定義されたことは、温室効果ガスが実質的に貨幣価値(カーボン・クレジット)をもち、具体的な技術移転を行うことによって他国で生じた温室効果ガスの排出削減量を自国の排出量から差し引くこと(カーボン・オフセット)がより現実的なものになったことを意味する。したがって、日中間でこのようなプロジェクトを行えば、日本の京都議定書遵守コストの削減、中国のローカルな環境の改善、地球温暖化防止、の3つが同時に達成される可能性がある。このような背景を踏まえて、平成12年度は、具体的な国際協力の可能性を明らかにするために、まず温室効果ガスの排出削減プロジェクトの経済性評価(温室効果ガスの排出削減量と排出削減コストの算定)に関するベースラインなどの論点を整理した。その上で、実際に日本と中国との間での共同実施活動(AIJ)プロジェクトの経済性評価に関する分析を行った。その結果、温室効果ガスの排出削減量や排出削減コストの具体的な大きさの算出などに関するさまざまな課題が明らかになった。また、このAIJプロジェクトによる大気汚染物質(SO2)の排出削減効果(マルチベネフィット)の貨幣価値化によって、プロジェクトの経済価値が高まることを定量的に示した。
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