研究分担者 |
小田 宏信 筑波大学, 地球科学系, 講師 (30280001)
村山 祐司 筑波大学, 地球科学系, 助教授 (30182140)
手塚 章 筑波大学, 地球科学系, 教授 (60155455)
平 篤志 香川大学, 教育学部, 助教授 (10253246)
松村 公明 秋田大学, 教育文化学部, 助教授 (20261646)
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研究概要 |
本研究は,EU統合の下で,フランスの国土空間がどのような地域変容を動態的に遂げつつあるかを地域実態に即して具体的に解明することを目的にした.本目的のために,EU中軸地帯との相対的な位置関係に基づいて中軸地域(リール大都市圏:平成10年度調査実施)・中間地域(リヨン大都市圏:平成11年度調査実施)・遠隔地域(トゥルーズ大都市圏:平成12年度調査実施)を調査対象地域に選定し,実態調査を蓄積させてきた. 3つの事例都市圏に共通して指摘できることは,EU統合を定めたマースリヒト条約以降,広域市場の形成に向けた都市開発を積極的に実施し,都心や都心周辺部の再開発,郊外の新規開発によって,各業種の産業集積を強化してきたことである. しかしながら,広域市場に向けた都市開発が導き得る経済的成功のポテンシャルは各都市圏の置かれた地理的条件に応じて多様である.EU中軸部に位置するリール大都市圏は関係位置の上で有利にあるとはいえ,パリやブリュッセル等の大都市と勢力圏が競合するという問題点を有している.リール大都市圏の場合,都市の中枢管理機能や商業機能においてよりはむしろ製造業の集積や物流の結節点として高い可能性を有している.また,リヨン大都市圏の場合には,幅広い既存の産業集積に加えて,パリやマドリード,ローマなどの大都市に匹敵する「ユーロ・シティ」の実現にむけた都市開発を実行しており,高いポテンシャルが看取できる.一方,トゥールーズ大都市圏は,その関係位置や工業化の沿革から必ずしも有利な位置にあるとは言えないが,ヨーロッパにおける航空機生産の中心として,また事業所サービスの供給拠点としての存在に活路を求めるともに,周辺地域に対する中心性を維持して行くことが予期される. 上記のような経済的戦略とともに,大都市圏整備の形態に各事例都市圏の個別性が見出せる.リールは,ルーベ,ツールコワンとのコナベーションを基調として,ベルギー側の自治体とも連携した大都市圏整備を進め,リヨンは積極的な都市再開発政策に,トゥールーズは郊外開発に,それぞれ相対的な特徴を有している.
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