研究課題/領域番号 |
10041071
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研究種目 |
基盤研究(A)
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応募区分 | 一般 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
古川 久雄 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (00026410)
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研究分担者 |
阿部 健一 国立民族学博物館, 地域研究企画交流センター, 助教授 (80222644)
池本 幸生 東京大学, 東洋文化研究所, 助教授 (20222911)
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キーワード | 人口移動 / 生態資源 / 環境問題 / 魚塘棚田 / プランテーション / 焼畑 / 生物相 / 大土地利用 |
研究概要 |
ブラジルにおいては、土地、森林、水などの生態資源の囲い込みと私有が顕著である。その結果、土地なし農民は増加し続け、熱帯林の消失には歯止めがかからず、環境悪化はますます深刻になっている。大土地所有に基づく、大規模モノカルチャー農法がブラジル農業の主流ではあるが、日系移民を含む中小規模の農家の中には、集約的で多様な土地利用様式を実践しているケースが見られる。彼等は生態資源の占有競争ではなく、土地利用の集約化によって市場競争を生き延びて来たのである。 東アジア、東南アジアでは、生態資源を共有しながら、多様な資源利用を営んできた。例えば小人口で土地に余裕のあるラオスは現在でも伝統的資源利用法を続けており、魚類相、植生相も高い多様性を示す。しかし他の多くの地域では、生態資源利用の様式が人口移動・人口増加を伴いながら変貌しつつある。最も顕著な例は中国雲南省で見ることができる。他省から移民を積極的に導入し、段畑造成地でゴム、果樹、茶、サトウキビなどのプランテーション農業を組織化し環境保全と利潤を両立させようとしている。高山地では棚田造成を進め、魚塘水田に家畜糞をリサイクルする。ベトナムでは戦争による混乱とその後の移民政策の結果、山地民の移動性が高まり、禿山化が進んだ。現在では植林計画とは山地民の定住化政策に力を入れている。これらの地域では、環境保全と生活向上の両立において多くの課題を抱えてはいるものの、住民の生態資源についての知恵をとり込みつつ、土地利用の集約化を図るという方式は、おおむね成功を収めている。
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