研究課題/領域番号 |
10041071
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
古川 久雄 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (00026410)
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研究分担者 |
安藤 和雄 京都大学, 東南アジア研究センター, 助教授 (20283658)
田中 耕司 京都大学, 東南アジア研究センター, 教授 (10026619)
山田 勇 京都大学, 東南アジア研究センター, 教授 (80093334)
竹田 晋也 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 助教授 (90212026)
岩田 明久 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 助教授 (20303878)
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キーワード | インドネシア政策移民 / Mega Rice計画 / ラオスの森林伐採 / 沿岸集落保全 / 地方分権強化 / 住民自立型開発 / 在地適正技術 / 覇権的自然観の転換 |
研究概要 |
インドネシア沿岸部泥炭湿地林の移民政策に伴う破壊的乱開発は1998年にクライマックスに達した。スハルト大統領と特定の開発会社が行った中・南カリマンタンにおける100万ヘクタール水田開発の失敗である。今年度の調査で、そのマスタープランと施工の現状を踏査の結果、失敗の原因が明らかとなった。事前調査と施工計画の決定的な不備に加えて、特異的な酸性硫酸土壌の認識不足、泥炭ドームの水文的性格に対する誤認,既存住民の生業保全に対する措置の完全な欠落である。スハルト政権末期の混乱の中で、1970年代以来の失敗が大規模に繰り返され、破壊された湿地林と不毛の開拓地のみが残った。自然に対する人間の覇権主義と、その思想に立つ技術の不毛性を形象化した。 ラオスの森林資源利用は国防省管轄の地域開発3公社が伐採を進めている。タイ、日本、台湾、ベトナム、中国雲南省へ木材を輸出するためである。伐採跡地の再植林は放置されており、森林資源は急速に消失している。跡地の農業利用は可能なので,インドネシアの泥炭湿地林に比べて破壊は地上部に止まっているが、自然に対する覇権的思想は同じである。 スラウェシではマングローブ帯のエビ池転換が堆砂の減少を招き,海岸侵食の危惧が高まり,住民によるマングローブ植林計画が強化された。 生態資源利用システムの適正化を図る新たな枠組みの実現が緊急の課題である。そのキーワードは、地方分権の強化、住民参加の自立型開発、現地の既存適正技術の選択である。生態的,技術的研究を超えて、住民共同体が保持する価値観の支援、覇権的自然観から共生的自然観への転換に働きかけることが必須である。
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