平成10年度フィリピン、平成11年度韓国に引き続き、最終年の平成12年度はイギリスにおける女性政策について、関係省庁の担当者、NGO、専門家などにインタビュー調査して何が日本に参考になるか検討した。 イギリスでは、1997年の労働党内閣成立に伴い、女性問題担当大臣が任命され、女性問題内閣小委員会が設置された。さらにその事務局として新たに女性部が設置された。女性部は、女性担当大臣が社会福祉大臣であったときは社会福祉省、現在の女性担当大臣は上院議長であるため、内閣府に設置されている。職員数37名で、各省庁からの派遣や契約職員が多い。 女性部最大の問題点は、根拠となる法律を持たないことである。女性問題の法律として、イギリスは国際的にも先駆者的な存在であり、1970年に同一賃金法、1975年に性差別禁止法を制定し、同時に機会均等委員会を設置している。しかし、これらの法律は教育雇用省の管轄で、女性部には移っていない。1997年に女性部が設置されたとき、教育雇用省から女性部に移ったのはNGOの国内連合体である女性国内委員会と一部の事業だけである。 女性政策に関して、女性部と教育雇用省の競争は日本の旧労働省と総理府の関係に酷似している。根拠法を持たない女性部は、広報・啓発を中心に三万人集会を行ったり、各省庁のジェンダーの主流化を進めるためのプロジェクトを実施している。その一例が、1999年9月に法務省、保健省、環境省の協力によりパイロット事業として開始した政策のジェンダー影響調査であり、2001年早々、成果報告が出てくる予定となっている。日本の内閣府でも、昨年橋本も研究協力者となっていた研究会がガイドラインを制定し、今年度からパイロット的に開始することになっている。イギリスは、フィリピン、韓国と異なり、議会に女性問題委員会は設置されていないが、内閣の女性問題小委員会は成果をあげている。
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