本研究では、女性の地位向上のための政策(女性政策)を効果的に行っている3カ国において関係機関の訪問および関係者に対する面接調査により情報を収集・分析し、これら女性政策が、女性の社会参加が遅れている日本でどの程度応用可能であるかについて調査・検討する事を目的とした。 調査対象国は、日本以上に女性の年齢階級別労働力率がM字型カーブを描き、女性が結婚・子育て時に仕事をやめる割合が多いが効果的な女性政策を次々と実施して女性の地位向上が目覚しい韓国とアジアで先進的な女性政策を実施しているフィリピン、および一時女性の労働力率が欧米先進国の中では唯一M字型を示していたイギリスの3カ国を調査対象とした。 調査結果で明らかになった、女性政策を振興させるための主要要件としては、次の6点が挙げられる。 (1)ジェンダーに配慮する最高指導者の存在 (2)国会議員との連携とサポート:国会における女性委員会の存在 (3)NGOとの連帯とNGOの貢献 (4)女性の地位向上のための法制度の充実 (5)強力なナショナルマシーナリーの存在 (6)効果的なジェンダー研修の実施 上記5点の中で特に日本に取り入れが可能であり、特に効果があがると思われるものは、(3)と(6)である。日本には残念ながら女性NGOの強力な連合体が存在しない。NGOが効果的な活動をして、政府に発言力を持つためには、様々なGOがメンバーとなるネットワークを構築することがNGOにとって急務である。 さらに、効果的なジェンダー研修は政府職員の意識改革の上で有効であるが、日本ではモデル的なプログラムも開発されていない。公務員研修での取り入れもおざなりな状況である。日本に最も適したジェンダー研修プログラムを開発し、国/地方自治体ともに実施していくことが急務であろう。
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