研究課題
国際学術研究
香港返還は今世紀末の東アジア地域における歴史的な事件の1つであった。返還直前の関心は、香港への中国中央政府からの政治的干渉の有無とその経済的繁栄を維持できるか否かということにあった。本研究では、返還による香港自身の変化と周辺地域への影響を総合的に調査することを目指した。本年度の柱は(1)返還後の香港の社会変容、(2)香港ネットワーク、(3)香港と華南地域との経済関係、(4)福建ネットワークの4つであった。(1)については返還を跨ぐ香港人アイデンティティーのゆらぎ(谷垣・鍾・黄・容)、香港の中国化がもたらした中国医学の新たな発展の方向性(帆刈)、香港・広東省間の人の移動(愛)の調査がなされた。(2)については、関元昌一族および容星一族のネットワークの聞き取り調査(容・谷垣)と文革期の中国・香港間の往来(中津)が実施された。(3)については、台湾・中国・香港で積極的な資料収集が行われた(濱下・洗)。(4)についてはインド洋と東シナ海、南シナ海を舞台にした福建ネットワークについて資料収集が実施された(飯島)。本年度はやや社会学的社会史的な調査が多かった。来年度は政治・経済的側面について強化する。また、研究の柱は(1)返還後の香港の社会変容、(2)周辺諸国への影響(特に台湾と中国の橋郷地方)、(3)香港ネットワーク(比較の対象として福建ネットワークを含む)の3つに整理する。調査地域にはイギリス・オーストラリア・韓国・マカオを含め、香港と関連の深い地域でより総合的に資料の収集と聞き取り調査を実施する予定である。また、中国と台湾に新たな研究協力者を求め、東京で活発な意見交換を行いたい。