中央アジアや中東欧の移行期経済では、持続可能な経済成長を可能にするために、マクロ経済の安定を基礎にして、生産・流通部門において経済活動の担い手となる近代的経営組織、そして流通組織の発展と、それらの活動を保障・支援する新しい制度の確立を含む経済・社会政策の導入が必要視されている。本研究は、中央アジア・東欧諸国の農業分野に焦点を絞り、新旧の生産・流通組織の構造とパフォーマンスの変化を比較分析・理解し、その結果をもとに政策分析を行い、移行期経済が持続可能な経済成長をとげるための政府の役割に関する包括的な政策的含意の導入を図ることを目的とした。 これまでに以下のことが達成された。 1)急速に変容を遂げる移行期経済における経済改革の状況とそれに関する研究成果について把握することができた。 2)東欧はハンガリーから、中央アジアはウズベキスタンから農家データと中央統計局が集計した地域別データを入手し、データベースをつくった。新古典派の経済分析手法により、農業生産者らは経済的に合理的な行動をとっていることが確認された。 3)これらをもとにデータ分析を実施した。移行経済の農業部門においては、投入財市場や生産財市場において存在する旧来の制度が、農業生産と流通の効率性の向上を阻害していることがいくつかの事例を通して分かった。そして、東欧においては阻害の程度が軽く、中央アジアにおいては、その程度が重いことが確認された。またこれは、中央アジアにおいては、協同組合であろうと個人農であろうと、直面している問題であることが分かった。 4)研究結果の一部は12回国際農業経営学会大会、1999年度日本農業経済学会大会、第7回欧州農業経済学会大会、第23回国際農業経済学会大会で報告した。
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