研究概要 |
オーストラリアにおける古生代前期のGondwana超大陸東縁の島弧一海溝系の復元は,すでにCambrian-Ordovicianの年代の知られている,New England Fold Bel中の蛇紋岩メランジに産するオルドビス紀の高圧変成岩やクイーンズランド北東部の島弧火山岩の産状や周辺地質の研究を出発点として企画され,さらに古い原生代のテクトニクスとの関係へ踏み込むこととなった.それは1)蛇紋岩メランジの研究,2)Rodiniaの分裂からGondwanaの成立の研究に分けることができる.1)について:U-Pb SHRIMP年代学の詳しい再検討から,エクロジャイトの形成年代は570Maで,このエクロジャイトが部分溶融し,ハンレイ岩にとりこまれた時代が460Ma,エクエクロジャイトのプロトリスの形成年代が660Maと考えられる.Port Maoquarieのエクロジャイトは670MaのSm-Nd年代を与えた.また,古生代の初期から中期の年代(534Ma:Sm-Nd法,430Ma,340Ma:Rb-Sr法)の変火成岩ブロックの存在も明らかとなった.しかし,Ar-Ar法による火成岩年代には200-230Maの年代を与えるものがあることも明らかになった.2)について:新期原生代のエクロジャイトの存在はRodinia超大陸分裂(約700Ma)に沈み込み帯の形成を想定させる.この沈み込み帯のクラトン側にはContinental Lithospheric MantleとOceanic Lithosphereの混合したmagmasourceをもったmagmatismがあったことが,Kanmantoo褶曲帯中のMt Arrowsmith volcanicsの地球化学の研究はから明らかになった.このような島弧一縁海システムは,オーストラリアに接していた可能性のあるシベリアの周辺の褶曲帯にも認められる.シベリア・サヤン山地の原生代後期のオフィオライトの研究はこの地域も,大陸地殻と海洋地殻の混合地域での活動であることを明らかにした. 今後は南北の中国のブロックとの関係を視野にいれた研究が課題となる.
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