研究概要 |
氷期のサンゴ礁の成立条件を明らかにして化石サンゴの採取可能性を探索するために、サンゴ礁前方の地形の精密音響測深をパラオ諸島において実施し,琉球列島において行った結果と比較した.さらに,これまでにパラオ 諸島を始めとするミクロネシアの広域から得られているサンゴ礁堀削コアを整理して,年輪記録解析に適当な1万年前以降のサンゴ化石を選び出した.パラオ諸島においては,気候変動の指標(proxy)の妥当性を検証するために,現世サンゴコアを採取した.同諸島においては,同時に,水温,塩分の連続観測と半月に1回の海水試料と降水試料の採取を2年間にわたって実施した.同観測と試料採取は,今後も継続する予定である.さらに,光合成・石灰化などの生物代謝,産卵などの生活史,白化などのイベントがどのようにサンゴ骨格に記録されているかを明らかにするための基礎的調査を実施した.今後骨格は記録とこれら環境条件との関係を詳細に比較するための解析を進める.水温と降水量の指標としてもっとも重要なサンゴ骨格の酸素同位体比測定について,新たに導入された質量分析計(Finnigan MAT252)と自動炭酸塩試料前処理システムの立ち上げとその精度・確度について,検証を行った.また,水温の指標として近年着目されているストロンチウム・カルシウム比について,表面熱電離型質量分析計による測定を予察的に実施するとともに,現在その測定を進めているオーストラリア国立大学において測定の条件等について研究連絡を実施した.
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