研究概要 |
平成11年度は、カムチャッカ半島最北部タロブカ川下流域、およびアイニン川支流のメルカヤ川流域に露出する白亜系を精査した。調査地域の白亜系は、下位からケドロフ(Kedrovskaja)層、マメット(Mametchinskaja)層、ペンジナ(Penzhinskaja)層の3塁層に区分できる。ケドロフ層はメルカヤ川流域に広く分布し、砂質頁岩、砂岩、砂岩泥岩互層からなり、石灰質団塊を多く含む。本層中部の泥質砂岩中の石灰質団塊から、アラスカや北米内陸部から多産するアルビアン階を示すアンモナイト、Grantziceras affine を産出した。、また、上部からは、セノマニアン階を示すNeogastroplites kamchatkensis,Parajaubertella kawakitana を産出した。 タロブカ川下流域から河口からにかけては、アラゴナイト保存のアンモナイト、イノセラムス化石を多産するマメット層およびペンジナ層が露出する。マメット層は礫岩を挟む砂石、砂質泥岩からなり、中部層から Inoceramus,Pennatulus,Birostrina nipponica などの二枚貝、Desmoceras(Pseudouhligella)japonica,Mikasaites sp.,Marshallites voyanusなどのアンモナイトを産し、セノマニアン階上部に対比できる。ペンジナ層はタロブカ川河口域に点在的に露出する。おもに、薄い砂岩を挟む泥岩からなり、きわめて保存の良い二枚貝 Sphenoceramus yokoyamai,Nanonavis sachalinensis,アンモナイトの Kossmaticeras theobaldinum,Yokoyamaoceras jimboi,Gaudryceras denseplicatum,Tetragonites glabrus,Yezoitesmatumotoi,Y.pseudoaequalis,Y.(?)glacilis,Scalarites mihoensis,ツノガイ、巻貝、海綿などを多産する。 従来、これらの化石群を含む地層は、サントニアン/カンバニア境界部に対比されていた(Alabushev and Wiedmann,1994)、今回の調査によりコニアシアン階に対比されることが明らかになった。北海道やサハリンの同階の化石群と比較すると、カムチャッカではテチス区の要素であるCollignoniceratidaeを全く含まず、また北海道では稀なKossmaticeratidaeが多産することが注目に値する。また、北海道のコニアシアン階を特徴づけるInoceramus uwajimensis,I.mihoensisも発見することが出来なかった。今後、化石動物群の解析を進め、時代ごとの古生物地理学的特徴や国際対比上の意義を明らかにする予定である。
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