研究課題
国際学術研究
本年度前半においては、増設する検出器で用いる前置増幅器の制作を行った。従来、シンチレーション検出器は粒子数測定用と、粒子到着時間測定用とに区別して用いられるか、一台の検出器に2本の光電子増培管(PMT)を用い、粒子数と時間測定を行ってきた。今回、開発制作した増幅器により、1本のPMTで両測定を行うことが可能となった。7月から10月にかけて、ボリビア・チャカルタヤ山宇宙物理学観測所において、既存の空気シャワーアレイに21台の1m^2シンチレーション検出器を設置した。これらの検出器には、今回制作した増幅器を用いている。今回の設置により、本アレイの検出器数は計66台となった。設置後、検出器の基本特性(粒子数および粒子到着時間測定に多する応答)データの収集を行い、11月より、予備観測を開始した。予備観測は平成11年3月まで行い、4月より本実験を開始する予定である。この予備観測で得られたデータは、直ちに日本、ボリビアにおいて解析され、観測アレイが正常に動作していることを確認した。また、このデータを用い、新たなデータ解析手法に関する検討を進めている。これは、今回観測対象としている空気シャワーが、この種の観測装置としては、最小観測限界のものであり、従来の解析手法では、一次エネルギーや到来方向に対する高い決定精度が得られないためである。このデータ解析手法に関しては、ほぼ検討が終わり、データ解析がルーチン化されつつある。以上の成果を用いた予備解析結果では、観測を目指していた、銀河面(特に銀経270度付近のベラ領域)の到来方向異方性が確認できた。この結果は、東京工業大学修士論文(常定芳基:研究協力者)として、まとめられた。最終的には、以後3年間の観測を実施し、測定精度を向上させるとともに、この異方性の一次エネルギー依存性を明確にする一方、測定結果と比較すべきシミュレーション計算を行い、10eV以上の宇宙線起源の解明を行う。
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