研究概要 |
2年間にわたって,極東ロシア沿海地域とくに南部地域の地質鉱床調査と資料の収集を行った.これはそれ以前に進めていた沿海地域の北部および中部地域に対するのと同種の継続研究である. 当該国の政治的外交的不安定性から,折角採取した岩石および鉱石試料が長いこと入手できないという事態が続いた.これは計画立案の初期においても,若干懸念されたことであったが,実際に出来してしまい計画が大幅に遅れることとなった.(この種の地球科学的研究を進めるにあたっては,試料の入手が必須であり,今後に一つの暗い影を投げかけている.)幸い,研究分担者の辛抱強い折衝と関係機関の弛みなき努力が功を奏してようやく搬入され,急ぎ,試料の調整,観察および実験用の試料の作成へと動き出した. 主として花崗岩質岩石の年代測定,主成分および微量成分の化学組成分析,帯磁率測定などがおこなわれ,母岩の変質,造岩鉱物の化学的性質や内部の包有物の性質などについて解析を進めてきた.この結果,当該地域における中生代以降のマグマ活動の実態と,その産物である深成火成岩体の分布,産状,岩石化学的性質が明らかにされつつある.これらの性質と本邦における類似岩石の性質との比較は,日本海のオープニングという地質現象を理解する上で不可欠の情報を提供している. また,これらの深成酸性岩に伴って生じたと考えられるいくつかの鉱床,とくに金鉱床・銀鉱床・蛍石鉱床などについて,鉱床地質学的・鉱石鉱物学的研究が進められた結果,この地域における鉱化流体の性質や鉱石の性質などについての知見が得られ,本邦の類似鉱床との成因的比較がなされつつある. これらの結果については,すでに日本地質学会や資源地質学会などにおいて公表してきた.
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