近年優れた耐震構造として実施設計においてもしばしば適用されるようになったコンクリート充てん鋼管(CFT)構造は、建築基準法に記載がないため特殊な構法とみなされ、同法施行令38条による建設大臣の認定が必要な構法となっており、一般的な構法として未だ認められていない。一方これまでわが国で行われたCFT構造に関する研究は、耐震性能に注目したものがほとんどで、現在進行中の日米共同研究においても、幅厚比が60程度までの鋼管を用いたCFT部材ならびに接合部の構造性能の解明に重点を置いた計画となっている。本研究は、わが国において設計施工実績や研究成果が不足している超薄肉大径鋼管を用いたCFT構造の設計施工や研究、CFT構造のクリープ現象や火災時挙勤に関する研究等の実態を、この面で先進地域であるアメリカ合衆国において調査研究し、CFT構造の合理的な設計法を確立することを目的として行われたものである。 本年度は次のような調査研究を行った。 1) アメリカ合衆国シアトル市ワシントン大、ミネアポリス市ミネソタ大、アトランタ市ジョージア工科大、ベツレヘム市リーハイ大において、CFT部材の鋼管とコンクリートの付着強度、鋼管によるコンクリートへの拘束効果、柱はり接合部での応力伝達機構、クリープ、火災時挙動などの研究項目について調査研究・資料収集を行った。 2) ニューヨーク市のコンサルタント、ワイドリンガー事務所において、薄肉大径鋼管のCFT構造の実施設計施工法の調査研究、構造計算書・構造詳細図等の設計図書の収集を行った。 3) ベツレヘム市リーハイ大において、日米共同研究の一環であるCFT長柱および骨組の実験に立ち会って見学し、実験結果を米側スタッフと検討するとともに、三重大学で開発した解析プログラムによって実験結果を追跡した。 4) 研究文献調査によるCFT構造に関する米国での実験データベースの作成、設計規準の収集およびわが国の設計規準の英訳、日米における設計施工法の比較研究を行った。
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