研究概要 |
ゾウリムシ(Paramecium caudatum)は従来接合型の違いにより16のシンゲン(遺伝学的種)に分かれていると考えられてきた。しかし、近年、シンゲンが種の分化を必ずしも反映するものではなく、複雑な進化経路を辿っていることが示唆されている。その全容を明らかにするためには多様なシンゲン・沢山の株を比較検討する必要がある。現在、標準株が維持されているのは、16のうち8シンゲンだけである。そのため、シシゲンが最初に記載された国、米国を含む5大湖周辺で精力的に採集を行い、以下の成果を得た。 1. 採集地点は米国シカゴに始まり、サンダーベイ、マラソン、サドベリー、トロント、ブルーミントンと5大湖を一巡するコースで、125地点で採集した。そのうち、ゾウリムシを14地点で採集できた。 2. P.caudatum以外の繊毛虫は、P.aurelia,P,bursaria,Frontonia,Euplotes,Stylonichia,Dileptus,Colpes,Lembadion,Halteria,Uronema,Trithigmostomaが得られた。 3. 14地点で得られたゾウリムシから75株を単離培養株として確立し、中国で採集した接合型未知の株も加え、既存の8シンゲンとの相補性を検討した。シンゲン1,2,3.12に属する株を得た他、8シンゲン以外の相補的な接合型すなわち新シンゲンが6コ(当面、シンゲシA,B,C,D,E,Fとする)見つかった。 4. そのうち、シンゲンA,C,Fは抗接合型V抗体と弱い交差反応を示した。 5. 株110は3シンゲンにまたがる接合型E^<3,5,6>を発現する。 まだ、接合型を同定不能の株が20株あり、これらに新シンゲンに属するものが含まれている可能性は高い。今後、RAPDパターンやmtDNAの多型の検討を行う。
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