研究概要 |
熱帯域の高い生物多様性について理解するには,種分化や多様性獲得の機構の研究が不可欠である.そこで本研究では分子系統学的手法を導入し,同地域で多様な種分化を起こしている植物の詳細な系統解析と各植物種の地域集団における遺伝的多様性や遺伝的分化パターンの比較を通じて,種分化が生じてきた過程を解明するのが目的である. 平成10年度,11年度はインドネシアに属する島嶼群にて12年度はニューカレドニア島にてシダ植物のコケシノブ科(Hymenophyllaceae),裸子植物のマキ科(Podocarpaceae),ナンヨウスギ科(Araucariaceae),被子植物のナンキョクブナ科(Nothofagaceae),ウルシ科(Anacardiaceae),タバコ属(Nicotiana)植物について野外調査・試料収集を行なった.それぞれの調査地にて採集した試料は日本に持ち帰りDNAを抽出してcpDNAゲノム上にコードされているmatKとrbcL遺伝子,核ゲノム上にコードされているnrDNA遺伝子のITS領域の塩基配列を決定していた.各群において今回の研究で決定した塩基配列に基づき系統解析を行った.各分類群で最節約法,近隣接合法,最尤法を用いて分子系統樹を作成した.その結果得られた系統樹に基づいて各群での植物地理学的,系統進化学的考察を行った.さらに今回の対象植物群全体の系統進化と現在の分布に基づいて,南半球での植物分布の変遷とこれらの植物のインドネシアでの分化の様子について考察を行った.
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