研究分担者 |
河野 博 東京水産大学, 水産学部, 助教授 (90234707)
佐野 光彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (50178810)
福代 康夫 アジア生物資源環境研究センタ, 助教授 (10165318)
岡本 研 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (20160715)
馬場 治 東京水産大学, 水産学部, 助教授 (40189725)
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研究概要 |
前年度に引き続きタイ国のトラン県シカオ水路で調査を行った.その結果,水路の流程が短く,外洋に面し,比較的潮汐による干満差が大きいことが水路内の水の交換を良好にし,そのために,この水路では,エビ養殖による富栄養化がおこりにくく,単位面積当たりの生産性が高いことがわかった.このことから,現在の規模で養殖が継続され,適切な指導が行われている間は,この地域におけるエビ養殖業が,周辺の環境や生態に重篤な影響を与えることは予想されなかった.しかしながら,そのためには,適切な養殖規模の推定を行うことが必要と思われた.そこで,水路内の塩分濃度の変化から,水路の水の滞留時間を求めた.今後,この地方におけるエビ養殖の実態を把握し,排出される排水の量および非水中の栄養塩などの濃度が明らかになれば,これらの値をもとに,水路を利用したエビ養殖の適正規模を求めることが可能となった.このことと平行して,主たる生産地のアンダマン海沿岸への移動を,政策として積極的に誘導すべきか否かについては.移動によって放棄された養殖池の回復,および利用の可能性と併せて判断する必要が有ると考え,フィリピンにおいて,放棄されたエビ養殖池の現状調査を行った.この調査は継続中である.3年間の調査を通じて,アンダマン海沿岸におけるエビ養殖は,現段階では,従来のエビ養殖に比べてより環境調和的であると判断された.しかしながら,このことは,タイ国の高度なエビ養殖技術が可能にしていることであり,技術レベルの低い他の地域で,同様の形態の集約的な養殖への転換を行えば,富栄養化が急速に進行することが予測される.この技術を他の地域で応用するためには,技術的な指導・援助が不可欠であると考えられた.
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