研究課題/領域番号 |
10041163
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 海外学術 |
研究分野 |
生態
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
市岡 孝朗 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助手 (40252283)
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研究分担者 |
田原 哲士 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (50001475)
大串 隆之 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (10203746)
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研究期間 (年度) |
1998 – 2000
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キーワード | オオバギ / シリアゲアリ / 被食防衛 / アリ防衛 / 相利共生 / 東南アジア熱帯 / アリ植物 |
研究概要 |
東南アジア熱帯を中心に多様な種が分布しているオオバキ属には、特定のアリ類と相利共生関係を結んで被食防衛を委ねるアリ植物種が多数知られている。オオバギは共生アリに食物を与え、代わりに共生アリはオオバギを食植者や植物の競争者から防衛する。 本研究では、まずオオバギ種間のアリ防衛の強度についての変異を、アリの除去実験やアリの攻撃度の測定により定量的に明らかにした。次に、アリを使わない、物理的・化学的防衛をまとめた非アリ防衛の強度に関する種間変異を生物検定を用いて定量的に測定した。その結果、アリ防衛と非アリ防衛の強度を種間比較すると、両者の強度の間には逆相関の関係があり、アリ防衛と非アリ防衛のバランスに種間変異がみられることがわかった。アリ防衛の強度の種間差は、オオバギが共生アリに与える食物体の量・窒素含量の差にも相関していることが、化学分析の結果よりわかった。アリ防衛と非アリ防衛のバランスは、加齢により変化し、共生アリが定着する前には非アリ防衛に定着した後はアリ防衛に偏ることが生物検定により示された。 オオバギと共生するシリアゲアリ間の種の組合せには強い特異性が見られるが、この特異性を創出し維持する機構として、分散する新女王による営巣植物種選択と定着後の相利共生の収支バランスの一致が重要であることが野外調査、操作実験により明らかになった。営巣植物種の選択には、オオバギ表面にある不揮発性の炭化水素が認識物質として新女王に利用されていることが化学物質の分析と生物検定によって示された。アリ種を入れ替えてオオバギと共生アリの種の組合せを人為的に変えると、食物体の量・質の不足によるアリのコロニー成長不良あるいはアリの防衛力の低下によって相利共生系の存続が困難になることが示された。 アリ防衛と非アリ防衛のバランスの差に反映される対植食者防衛の種間変異がオオバギを利用する食植者群集の多様性をもたらしていることが、長期にわたるオオバギの人口学的調査によって明らかになってきた。
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