研究概要 |
平成11年8月、我々はタイ最南部のナラティワス自然林と北部のチェンマイのシリキット王女動物園所属の自然林でフタバガキ植物、菌根菌、茸類、ショウジョウバエの採集を行った。この調査旅行でフタバガキを約50種(120サンプル)、200サンプルの菌根菌、きのこを100サンプル、1000匹のショウジョウバエを採集した。平成12年1月にはスリランカで同様のサンプリングを行い、それぞれ、約20,100,50,100の個体を採集した。これらの材料を使い、フタバガキ、菌根菌、茸類のDNA塩基配列の決定を行った。これまでのマレーシア、タイのデータとともに完成度の高い分子系統樹を作成した。菌類の分子系統樹に関しては他の研究者によって作成された系統樹に我々のデータを加えて信頼性の高い分子系統樹を作成することに成功した。菌根菌の解析による共生の特異性に関してはこれまでに約60サンプルで特異性を明らかにしたが、かなりのサンプルで植物のDNAの増幅がうまくいかず、現在その原因を究明中である。すべてのサンプルでの共生の特異性を明らかにできるのにはもうしばらく時間がかかりそうである。これまでの結果では1ー1の特異性があるものもあるが、多くのフタバガキでは1種のフタバガキに多くの菌類が共生しているという場合が普通である。共生の進化の概要を把握するためにはより多くのサンプルの解析が必要である。また、菌と共生しているショウジョウバエは予想以上に種類が多く、種の同定がまだ終了していない。分担者のPrigent博士が来年度もこの研究を継続し、菌とショウジョウバエの共生関係を明らかにする予定である。
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