研究課題/領域番号 |
10041176
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
渡辺 泰徳 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (20112477)
|
研究分担者 |
三村 徹郎 一橋大学, 商学部, 教授 (20174120)
三田村 緒佐武 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (50030458)
佐藤 泰哲 山形大学, 理学部, 教授 (60007177)
中野 伸一 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助教授 (50270723)
杉山 雅人 京都大学, 総合人間科学部, 助教授 (10179179)
|
キーワード | バイカル湖 / プランクトン / 富栄養化 / ロシア / 環境影響 |
研究概要 |
1999の夏季に調査を行った。バイカル湖では近年、内湾部でアオコ発生が報告され、沖帯でも透明度の低下が常態化しつつある。また、ロシア経済・産業の急展開とバイカル湖の観光資源化が湖の富栄養化に拍車をかけることが危惧されている。本研究はこの状況にたって、河川水の流入と湖での水塊形成の機構、河川・湖・堆積物相互間での無機元素・栄養元素の動態、生産層での光分布・光利用と生元素代謝、ピコプランクトンを含む植物プランクトン-動物プランクトンの動態と食物網解析、光合成生産と窒素利用速度の測定、沿岸水草の生元素代謝まで、陸水物理から化学・生物にいたる総合的な解析によって富栄養化の現状とその影響の解析を目指した。観測と試料の採取は、沖帯については南湖盆と中央湖盆最深部周辺、沿岸ではバルグジン湾とチヴィルキー湾を中心におこなった。バルグジン川から湾にかけて高濃度のリンの供給と河口域での活発な生物利用が明らかになり、[表層での生物摂取]-[懸濁物の沈降]-[中・深層での溶解]といった海洋と同じ循環の図式が成立していた。沖帯のピコプランクトンによる光合成生産の垂直変化からも有光層での栄養吸収が裏付けられた。しかし、50m以深の溶存態栄養塩は高濃度にあり、深層水が湧昇により表層に達すると植物プランクトンの大発生につながることが推測された。そのプランクトンが浮上生の高いらん藻であると水面に蓄積しアオコ状態になるのであろう。細菌やピコシアノバクテリアの捕食者として重要な鞭毛虫および繊毛虫は、それぞれ表層および5m層に最高の分布を示し、微生物食物連鎖は有光層上部において大きく機能している可能性を示していた。植物プランクトンはリンおよび窒素の不足で制限を受けていたが、沿岸の水草はリン酸欠乏ではなく、流入する栄養元素の経路が今後の解析で注目されるべきかもしれない。
|