研究分担者 |
國府方 吾郎 国立科学博物館, 筑波実験植物園, 研究官 (40300686)
樋口 正信 国立科学博物館, 植物研究部, 主任研究官 (10189772)
柏谷 博之 国立科学博物館, 植物研究部, 室長 (10000142)
前川 二太郎 日本きのこセンター, 菌蕈研究所, 主任研究員 (00142638)
高橋 弘 岐阜大学, 教育学部, 教授 (40021331)
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研究概要 |
平成11年度は本研究の一環として、四川省内の39地点においてコケ類、地衣類、菌類そして植生の現地調査及び標本収集を実施した。今回調査した場所は、垂直分布からみると低地の常緑広葉樹林から亜高山帯の針葉樹林を含むが、特に低地では自然林はほとんど見られなかった。しかし、寺院等の周辺にはまだ良好な森林が残されていた。 コケ類は約2800点の標本を採集した。2000m以下の低地では、コマチゴケ科もアブラゴケ科などの熱帯要素の種が見られ、中国内部へも分布域を拡大しているのが確認された。また、この地域のコケ類は日本のものとの関連が強く、ヒメジャゴケを初め多くの共通種が見られた。一方、高地ではより周北極要素が多くなる傾向が見られた。 地衣類は約1000点の標本を採集した。地衣類は標高1800mを越えると樹皮,岩上着生とも非常に豊富に生育していた。しかし,これ以下の高度ではムカデゴケ科,ダイダイゴケ科をのぞいてほとんど生育しない。特に他の地域では平地の樹皮上に普通に見られるモジゴケ科地衣類が極端に少ないのが目に付いた。また,四川盆地の底部では,葉上地衣類の存在を期待したが,ほとんど見られなかった。 菌類は、とくに担子菌類のハラタケ目およびヒダナシタケ目の調査採集を行い、約750点の標本を採集した。現在までに、Sistotrema estonicum Parm.、Tubulicrinis chaetophorus(Hoehn.)Donkなどの中国未報告種を確認した。また新種と思われるものもいくつか認めている。 植生調査の資料として、約2000点の顕花植物の標本を採集した。その中には分類学的に興味深いものもあった。例えば、ホウヨウホトトギスが四川省に産することが明らかになった。また、イワタバコ科Petroscomea属2種の雑種と見なされるものが見いだされた。
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