サルモネラ腸炎の原因となるSalmonella属菌の病原因子のうち、まず侵襲性に着目した。侵襲性を規定する遺伝子群からinvA遺伝子を選び、この遺伝子に対する特異的な検出系をPCR法を応用して構築した。タイで分離された環境および臨床分離株、563株、は全てinvA陽性であったが、サルモネラ属菌以外の30種類にわたる176株の細菌は陰性であった。次ぎに、サルモネラ・エンテロトキシン(STN)を規定するstn遺伝子に対する特異的な検出法を、同様に構築した。stn遺伝子も、タイで分離された環境および臨床分離株、563株、で全て陽性であったが、サルモネラ属菌以外の30種類にわたる176株の細菌では陰性であった。以上の結果から、今回構築した2種類のPCR法はサルモネラに特異的であることが証明できた。 このサルモネラに特異的なPCR法(STNのみ)を用いて実験的にミンチ肉と糞便サンプルにサルモネラを混入させて調べた結果、増菌培養法を併用することで1グラム当たり1個のサルモネラが存在すれば検出可能であった。この方法は医学のみならず食品検査を含む公衆衛生分野で有効であると考える。
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