研究課題/領域番号 |
10041195
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
速水 正憲 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (40072946)
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研究分担者 |
伊吹 謙太郎 京都大学, ウイルス研究所, 助手 (00273524)
井戸 栄治 京都大学, ウイルス研究所, 助手 (70183176)
三浦 智行 京都大学, ウイルス研究所, 助教授 (40202337)
武久 盾 金沢大学, 医学部, 助手
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キーワード | AIDS / HIV-1 / 霊長類レンチウイルス / SIV / マンドリル / 中央アフリカ / カメルーン |
研究概要 |
AIDS(後天性免疫不全症候群)の原因ウイルスであるヒト免疫不全ウイルス(HIV)はサル免疫不全ウイルス(SIV)と共に霊長類レンチウイルスの一亜群を形成している。霊長類レンチウイルスの進化系統を明らかにすることはHIVの起源のみならずその病原性の理解の一助となる。本年度では、HIV-1の起源地と考えられている中央アフリカのカメルーンに生息するマンドリル由来のSIVの解析を行った。 ヤウンデ大学病院を基点に、カメルーン南部のエボロワ周辺の村落でペットとして飼育されていた33頭のマンドリルの疫学調査をしたところ、うち4頭がSIV抗体陽性であった。これらの4頭のマンドリルがもつSIVmnd(マンドリル免疫不全ウイルス)は、そのpol遺伝子integrase領域(288bp)の分子系統解析により、既報のどの霊長類レンチウイルスとも全く異なる独自のグループを形成した。そのうち2例からウイルス分離に成功し、その1株(SIVmnd98CM16)の全ゲノム解析を行った。 このウイルス株は全長9514bpであり、遺伝子構造は修飾遺伝子としてHIV-2が持つvpx遺伝子を持っていた。分子系統解析の結果、この株のgagからvpr遺伝子領域は、異なる2つの領域から成り立っており、1つはHIV-1/SlVcpz(チンパンジー由来のSlV)に近縁なSIVrcm(アカエリマンガベイ由来のSIV)とグループを形成する領域であり、もう1つの領域は今迄に報告のない独自の群を形成する領域であった。またenvからnef遺伝子領域では、既報のガボンのマンドリル由来のSIVmmdGB1株と同じグループを形成した。 このことから、このウイルス株は一つの祖先ウイルスから進化してきたのではなく、複数のSIV間の組換え体であると考えられた。このことは過去の中央アフリカにおける霊長類間の種間感染を示唆するものであり、ウイルスの組換えが霊長類レンチウイルスの進化に大きく関わっていると考えられた。
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