研究分担者 |
橘 裕司 東海大学, 医学部, 助教授 (10147168)
柳 哲雄 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (10174541)
上村 春樹 長崎大学, 熱帯医学研究所, 講師 (60184975)
RIVERA Windell L. 東海大学, 医学部, 特別研究員
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研究概要 |
近年赤痢アメーバが病原性のあるEntamoeba histolyticaと病原性のないE.disparよりなることが明らかとなった。ヒトヘの影響を考えた場合,前者の流行疫学を明確にすることが赤痢アメーバ症の予防に重要である。先にフィリピン北部で行った疫学調査に加えて,流行条件のかなり異なるマニラ市内スラム地域での疫学調査を行うことにより病原性アメーバの感染様式の特徴を明らかにしたいと考えた。総計1,038人の糞便検査が行われた。そのうち顕徴鏡検査で赤痢アメーバシスト陽性者106名,大腸アメーバ170名,ハルトマンおよび小型アメーバが3名および213名であった。小型アメーバ腸性者を除くシスト陽性者について赤痢アメーバ両種を識別できるPCR法を適用した。136名の陽性者を検出したがE.histolytica36名,E.dispar100名,そのうち両者とも腸性者(混合感染者)は6名であった。前回と同様PCRは顕微鏡検査に比し,より鋭敏にシストを検出することが示された。病原性種E.histolyticaの占める割合は北部地域よりやや高率に認められた。E.coli,E.nana,Giardia lambriaなどは北部地域よりずっと高い陽性率を示した。腸管内寄生虫感染についても回虫49.1%,鞭虫67.2%と非常に高い腸性率を示し,北部地域のそれがそれぞれ3.0%,1.3%と低率であったのと際立った差異を示す。両地域で糞便汚染による感染性の寄生虫症が極端な差異を示すにもかかわらず,赤痢アメーバが似かよった感染率を示すことは,赤痢アメーバの感染様式が同じ糞便を通じたものでも性格的に異なったものであることを示す。大腸アメーバは比較的似かよった性質を持つようだ。興味ある点はスラム地域では病原性アメーバの比率が高く,スラム環境がこの種に有利に働く何らかの要因を持っていると考えられる。
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