研究分担者 |
橘 裕司 東海大学, 医学部, 助教授 (10147168)
柳 哲雄 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (10174541)
上村 春樹 長崎大学, 熱帯医学研究所, 講師 (60184975)
RIVERA Windell L 東海大学, 医学部, 特別研究員
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研究概要 |
赤痢アメーバには非病原性のものと病原性のものが含まれ,これらが別種だとする考えが認められるにおよんで,これまで顕微鏡による糞便内シストの検出で感染率が調べられていたものが,疾病予防という立場からは病原性のもののみの感染状況を知ることが重要となった。そこで糞便中のシスト検出とPCR法による両種の識別方法を併用することにより,フィリピンルソン島のいくつかの場所で両種の流行様式を明確にしようと試み,これまでに得られた結果は 1)両種をあわせた感染率は高い地域でも10%余りで,他の寄生虫感染率が70%に達するような地域をもつことを考えれば感染様式の効率が悪いか,他の抑制要因があると考えられる。 2)いかなる地域においても病原性種Entamoeba histolyticaの感染率は非病原性種E.disparの半数以下である。 3)両種とも地域による感染率の差が大きい。公衆衛生条件が同じようであれば冷涼地域の方が伝染に適している。 4)病原性種は一地域内でも地域内変動が強く,人から人への感染は接触が密な家族内感染が主体であろうと考えられる。したがって最も高い感染率はマニラのスラム街で見られた。 5)両種とも5-14才の年令層に最も感染率が高く,しかも女性により高率に認められる。この原因については生活習慣の点から解明を急いでいるが,未だ不明である。 6)我国の大分県高崎山猿集団に40%を越す非病原性種の感染が認められたことは,猿の方が赤痢アメーバにとってより好適宿主である可能性が高い。
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