研究分担者 |
副島 美貴子 久留米大学, 医学部, 助手 (80279140)
藤谷 登 久留米大学, 医学部, 助教授 (10156888)
神田 芳郎 久留米大学, 医学部, 講師 (90231307)
劉 玉華 久留米大学, 医学部, 助手 (30299515)
HAO Pang Kurume University, Dept. Forensic Med., Instructor
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研究概要 |
ABO式血液型の抗原をA,B,H抗原と言い、糖鎖から成る。ABH抗原は、赤血球の膜のみならず分泌液にも存在することが知られている。古くから、唾液中にABH抗原を分泌している人(分泌型、secretor,Se)と分泌していない人(非分泌型、non-secretor,se)の存在が知られており、分泌型・非分泌型は、α(1,2)fucosyltransferaseという酵素により支配されており、最近その遺伝子(FUT2)も単離された。分泌型の遺伝子型は、Se/Se又はSe/se、非分泌型のそれはse/seである。私達はFUT2の対立遺伝子をアフリカ、ヨーロッパ、イラン、バングラディッシュ、中国、韓国、日本、サモアの諸集団で調べ、多数の対立遺伝子を見出した。興味あることに非分泌型遺伝子seは人種特異的であることである。se^<428>は、アフリカ人、ヨーロッパ人、イラン人、にのみ見出され、中国人、韓国人、日本人、サモア人、にはse^<357・385>が見出された。この2つの対立遺伝子は、上記諸集団では共に存在することはなく、しかもその遺伝子頻度はすべての集団で0.4〜0.5である。しかし、バングラディッシュ人においてのみ2つの対立遺伝子が共存しており、se^<428>の頻度は0.234、se^<357・385>の頻度は0.074であり、バングラディッシュ或いはインドの東部で、いわゆる白人種とアジア人種の混血が進んでいることを示している。現在、現代人の起源はアフリカ起源説であるが、FUT2の非分泌型遺伝子が、アフリカ人及びいわゆる白人種(ヨーロッパ人、イラン人)で、se^<428>(頻度0.4-0.5)であり、アジア人のそれはse^<357・385>(頻度0.4-0.5)であることは、大変興味深い。即ちアジア人においてse^<428>が消失し、新たなse^<357・385>が生じ、しかもその遺伝子頻度が、0.4-0.5にまで広がったことは何を意味するか、今度の課題である。
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