研究課題
国際学術研究
本年度は、本研究の初年度にあたり、研究代表者の米澤傑が、平成10年6月21日から平成10年7月6日まで米国の各共同研究機関を訪問し、共同研究計画の作成を行った。また、ちょうど米国留学中の、中国西安の第四軍医大学の王福安教授とも会見し、超微形態的研究の研究結果の整理を行った。平成11年2月12日には、鹿児島大学医学部において、米国の研究分担者3名を招聰して、「ヒト癌におけるムチン遺伝子発現の意義」と題するセミナーならびに関連会議を開催し、本年度の研究成果をまとめると共に、次年度の研究計画の打ち合わせを行った。なお、本年度の研究実績を以下に示す。(1)膵と肝内胆管の膨脹性発育腫瘍に時折認められる浸潤性発育部位では、予後不良因子の膜結合型MUC1ムチンが発現し、腫瘍の浸潤にかかわっている可能性が見い出された。(2)浸潤傾向の少ない「粘液産生性膵腫瘍」の分子病理学的検索により、分泌型ムチンのMUAC5AC(胃型)とMUC2(腸型)の遺伝子発現様式が各組織亜型により異なっていることを明らかにした。(3)膵と肝内胆管の浸潤性癌に特徴的に発現するMUC1ムチンにおいてはシアル酸エピトープが重要であることを明らかにした。(4)ヒト胃癌において、糖鎖の結合状況の異なる種々のMUC1ムチンと、MUC2ムチンの発現を検索したところ、MUC1ムチンの糖鎖の結合状況に関係なく、MUC1(+)・MUC2(-)のグループが最も予後が悪く、MUC1(-)・MUC2(+)のグループが最も予後が良いことが明らかとなった。(5)ヒト食道癌において、シアル酸の結合したMUC1ムチンの陽性群は陰性群に較べて明らかに予後が悪かったが、MUC1ムチンコア蛋白の陽性群と陰性群の間には予後の差はなかった。(6)大腸でのadenoma-carcinoma sequenceにおける腫瘍の進展とpericryptal sheathの減少に密接な関連性があることを明らかにした。以上の研究成果をふまえ、さらに緊密な先端研究交流を行い、基礎から臨床に至る幅広い視点からの研究を遂行したい。
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