研究分担者 |
SUTTAJIT Mai チェンマイ大学, 医学部, 教授
高橋 隆 愛知県がんセンター, 研究所, 部長 (50231395)
土屋 永寿 埼玉県立がんセンター, 研究所, 主幹 (00072314)
藤木 博太 埼玉県立がんセンター, 研究所, 所長 (60124426)
清水 弘之 岐阜大学, 医学部, 教授 (90073139)
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研究概要 |
本研究は、女性肺癌高率地域と低率地域の女性住民の比較調査の結果に基づき、発がん促進因子の生化学的検討を行うとともに、患者対照研究及び肺癌組織の病理学的・分子生物学的検討を行っている。これまでの住民調査により、喫煙率はむしろ低率地域の方が高く、高率地域の一般女性住民の特徴は,慢性気管支炎などの良性呼吸器疾患が多いことであることが明らかになった。両地域とも,血清中のビタミンB12と葉酸の濃度が極めて高く,特に低率地域では、対象者のほとんどが測定限界以上であった。住民調査の一環として行った居住家屋内の空気中浮遊細菌は、高率地域で多様な菌相が認められかつ菌量も多かった。 今年度の調査・分析により,新たに以下の結果が得られた。 1. 尿の変異原性は、高率地域が低率地域より著しく高く、特に良性呼吸器疾患既往者は高い変異原性を示した。 2. 内因性の発がんプロモーターであるTNF-αの血清濃度は、良性呼吸器疾患既往者>喫煙者。非既往・非喫煙者の順であった。 3. 高率地域の居住家屋内で最も高頻度に検出された菌は、子嚢菌(Microsporum canis)と同定され、この菌に由来すると考えられるβ-D-グルカンが高率地域住民の血清から検出され、体内への侵入が強く疑われる。 4. M.canisのコードファクター様物質の発がん促進活性を検討するため、予備実験として菌体成分をマウスの腹腔内に投与したところ、肺でのTNF-α産生が著しく増加した。 5. 肺癌症例の病理学的検討により、チェンマイ女性肺癌は、本邦と比べ扁平上皮癌が多く、腺癌では低分化型が多く、環境由来の発癌促進因子の関与が大きいと考えられる。患者対照研究は順調に進められており、すでに患者150例、対照300例が調査された。最終的にはこの2倍の大規模調査になる予定である。癌組織DNAも蓄積されつつあり、解析の準備にかかっている。
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