研究概要 |
本研究では、我が国においてまだ揺藍期にある進化心理学の礎を築き、実証研究においてその有効性を示すことを目的とした。この目標を実現させるため、進化心理学の第一人者てある、Daly,Wilson両教授とともにさまざまな研究活動を行った。以下、研究成果を、a)進化心理学の普及と研究基盤の整備、b)進化心理学の基礎的研究における日加間でのデータの比較、の2点に分けて述ぺる。 進化心理学の普及と研究基盤の整備については、1999年の9月に「人間行動進化学研究会」(現会員数は約120名)を発足させ、同年12月に第1回研究発表集会(特別講演2件、一般発表19件)を開催した。また研究発表集会に合わせて、日本認知科学会のシンボジウム「進化の認知科学」をオーガナイズした。Daly,Wilson両教授をこの2つの研究会に招き、基調講演ならびに討議に参加していただいた。現在、人間行動進化学研究会では、インターネットを利用レて会員に活発な情報提供を行っている。両長谷川は、進化心理学と人間行動生態学に関する総説ならびに教科書(印刷中)を出版し、国内外の複数の学会・ワークショップで進化心理学に関する講演を行った。 進化心理学の実証面での日本・カナダ協力研究では、1)殺人行動、2)死亡率の性差の分析を行った。殺人研究では、両長谷川がDaly,Wilson両教授の著書であるHomicideを邦訳するとともに、日本の殺人資料を進化心理学の観点から分析した。その結果は、米国人間行動進化学会、トロント大学犯罪学研究所等で発表した。死亡率の性差に関する行動生態学的分析は、Daly,Wilson両教授による古典的な研究があるが、我が国の長期的な人口学資料の分析を通して、欧米とは異なるパターン、すなわち戦前における女性死亡率の高さが浮き彫りになった。この結果についても、国内外の学会で発表した。l
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