認知機能の進化に関する比較心理学的・比較認知発達学的研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10044007
• 研究種目: 国際学術研究
• 応募区分: 共同研究
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 藤田 和生 京都大学, 文学研究科, 助教授 (80183101)
• 研究分担者: FAGOT Joel フランス国立科学研究所, 認知神経科学研究センター, 準研究員 ; ANDERSON Jam スターリング大学, 心理学部, 上級講師 ; 上野 吉一 北海道大学, 実験生物センター, 助手 (40261359) ; 板倉 昭二 大分県立看護科学大学, 看護学部, 助教授 (50211735) ; 友永 雅己 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (70237139)
• キーワード: 視知覚 / 化学感覚 / 認知発達 / 社会的知性 / 視線認識 / 霊長類 / ハト / 生物的運動

研究概要

本課題の目的はヒトの認知機能の進化学的背景を多角的な実験から総合的に解明することである。藤田はマカクザルの認知発達を友永、石川(協力者)と共同で分析し、生物的運動などが早期から認識されることを示した。山下(協力者)と共同で、ハトの色知覚がヒトと類似していることを示した。別財源で7月〜1月まで京都に滞在したアンダーソンが、藤田、粟津(協力者)と共同で、リスザルの衝動的選択行動を分析し、衝動性の制御が可能なことを示した。また藤田、12月〜2月まで滞在したヴィック、黒島(ともに協力者)と共同で、リスザルが欺き行動を学習することを示した。ヴィックは藤田と共同でオマキザルが実験者の視線方向を認識できることを示した。2月にファゴッドが来日し、藤田とリスザル・オマキザルの写真認識と所有の概念に関する実験をおこなった。藤田、山下、石川、粟津、黒島は、11月にダラスで催された米国基礎心理学会に出席し、研究報告をおこない、研究討議をテキサス大学他の研究者とおこなった。上野は11月にフィラデルフィアのモネル化学感覚研究所に滞在し、霊長類の匂い知覚とその発達に関する予備的研究をおこなった。板倉はチンパンジーの視線認識が、チンパンジーやヒトの音声の提示により向上することを示した。プティ(協力者)が6月に来日し、板倉と共同で成人の視覚的注意が無自覚的に顔写真や線画の視線方向に移動することを示した。友永はチンパンジーの顔認知、ニホンザル乳児の新生児模倣、愛着の発達、マカクザルの共同注意を分析した。7月に別財源で犬山に滞在したファゴットとともに、チンパンジーの主観的輪郭の知覚を分析した。また4月に別財源で来日したヴィザルベルギとともに、霊長類の道具使用に関する研究をおこなった。7月始めに、犬山で上野、ヴィザルベルギを除く関係研究者が会合を持ち、研究計画全体の打ち合わせと研究討議をおこなった。

研究成果

• [文献書誌] Fujita,K.(Silberberg,A.): "Natural choice in nonhuman primates." Journal of Experimental Psychology: Animal Behavior Processes. 24(2). 215-228 (1998)
• [文献書誌] Fujita,K.(Ueno,Y.): "Spontaneous tool use by a tonkean macaque(Macaca tonkeana)." Folia Primatologica. 69. 318-324 (1998)
• [文献書誌] 藤田 和生: "比較認知研究から見た擬人主義" 動物心理学研究. 48(2). 209-215 (1998)
• [文献書誌] 藤田 和生(粟津俊二): "社会的関係がラットの食物伝達に与える影響" 動物心理学研究. 48(2). 183-190 (1998)
• [文献書誌] 藤田 和生: "動物のあいさつ行動" 國文学. (印刷中). (1999)
• [文献書誌] Tomonaga,M.: "Perception of shape from shading in chimpangees(Pan treglodytes)and humans(Hems sapiens)." Animal Cognition. 1(1). 25-35 (1998)
• [文献書誌] Tomonaga,M.: "Visual texture segregation by the chimpanzee(Pan troglodytes)." Behavioural Brain Research. 99. 209-218 (1999)
• [文献書誌] 友永 雅己: "大芝論文を読んで。" 心理学評論. 41(4). 423-425 (1998)
• [文献書誌] Tomonaga,M.: "Inversion effect in perception of human faces in a chimpanzee(Pan troglodytes)." Primates. (印刷中).
• [文献書誌] Tomonaga,M.: "Establishing functional classes in a chimpanzee(Pan troglodytes)with a 2-item sequential respending procedure." Journal of the Experimental Analysis of Behavior. (印刷中).
• [文献書誌] Itakura,S.(Buttercocsth,S.): "Development of precision grip in chimpanzees." Developmental Science. 1. 39-43 (1998)
• [文献書誌] 板倉 昭二: "身体の動きから読みとる心" 丸野俊一・子安増生(編著)子どもが心に気づくとき(ミネルヴァ書房). 111-141 (1998)
• [文献書誌] 板倉 昭二: "自己の起源" 児童心理学の進歩(金子書店). 177-199 (1998)
• [文献書誌] Itakura,S.: "Use of experimenter-given cues during object choice tasks by chimpanzees(Pan troglodytes),an orangutan(Pongo pygmaeus),and human infants(Hems sapiens)." Journal of Comparative Psychology. 120. 119-126 (1998)
• [文献書誌] 板倉 昭二: "気持を伝える。" 古川聡(編著)ふれあいの心理学(福村出版). 55-66 (1998)
• [文献書誌] Ueno,Y.(Morimura,N.): "Influence of feeding conditions on zoo animal behavior." Proceedings of the Third International Conference of Environmental Enrichment,Orlando. 330-344 (1998)
• [文献書誌] Ueno,Y.: "Spontaneous tool use by a tonkean macaque(Macaca tonkeana)." Folia Primatologica. 69. 318-324 (1998)
• [文献書誌] 上野 吉一: "第3回環境エンリッチメント国際会議の報告:環境エンリッチメントの世界的状況" 動物心理学研究. 48(1). 65-68 (1998)
• [文献書誌] 上野 吉一(森村成樹): "動物園における哺乳類9種の行動の日内配分:種間、環境間の比較" 動物心理学研究. 48(1). 33-45 (1998)
• [文献書誌] 上野 吉一: "匂いの認知の異文化比較:比較認知科学からのアプローチ" エコソフィア. 2. 40-51 (1998)
• [文献書誌] 上野 吉一: "霊長類の嗅覚・視覚依存度に関する種間比較" 日本味と匂の学会誌. 5(3). 277-280 (1998)
• [文献書誌] Anderson,J.R.: "Sleep,sleeping sites,and sleep-related activities: awakening to their significance." American Journal of Primatology. 46(1). 63-75 (1998)
• [文献書誌] Anderson,J.R.: "Social stimuli and social rewards in primate learning and cognition" Behavioural Processes. 42(2-3). 159-175 (1998)
• [文献書誌] Anderson,J.R.(Silberberg,A.): "Natural choice in nonhuman primates." Journal of Experimental Psychology: Animal Behavior Processes. 24(2). 215-228 (1998)
• [文献書誌] Visalberghi,E.: "Social context and consumption of unfamiliar foods by capuclun monkeys(Cebes apella)over repeated encounters." American Journal of Primatology. 45(4). 367-380 (1998)
• [文献書誌] Fagot,J.(Denielle,C.): "Visual search for global/local stimulus features in humans and baboons." Psychonomic Bulletin & Review. 5(3). 476-481 (1998)
• [文献書誌] 藤田 和生: "比較認知科学への招待-「こころ」の進化学" ナカニシヤ出版, 247 (1998)
• [文献書誌] 藤田和生(浅野俊夫): "動物コミュニケーション-行動のしくみから学習の遺伝子まで(訳書)" 西村書店, 569 (1998)
• [文献書誌] 山下博志(乾 敏郎): "認知発達と生得性-心はどこから来るのか-(訳書)" 共立出版, 334 (1998)