研究概要 |
平成10,11年度の2年間に渡り、絶滅危惧種の大型哺乳類のゴリラとパンダの繁殖に関する行動資料の収集を飼育繁殖施設において行った。 ゴリラの場合。アメリカの2施設(オハイオ州コロンバス動物園とカリフォルニア州サンジエゴ・ワイルドアニマルパーク)で、集団成員の社会関係の把握を行うとともに、生後1歳から4歳までの子どもに対する母の世話・養育行動が分析された。ゴリラの集団はおとなのオス1頭と2から5頭のおとなのメス(概ね10歳以上)とその子供たちから形成されている。観察が行われた2施設では、おとなのメスがそれぞれおとなオスとの関わりを維持しているが、他方、血縁のないおとなのメス同士では関わりが少ないという野生集団に類似した傾向が確認できた。35歳を超える高齢のメスも定期的に発情し、オスとの交尾が確認できた。母から養育放棄されて人によって育てられた子供も、2歳までには集団内に統合され、種に固有の行動の学習が促進された。これは、オトナになってからの繁殖行動が可能であることを示唆している。また、医学的治療目的で一時的に分離された子供の行動は同様の事態に陥った人の子供ときわめて類似しており、ゴリラ研究とヒト研究が融合することが、今後の大きな成果に結びつくことが示唆された。 パンダの場合。上野動物園のオスとメスの2頭、および白浜サファリパークのオス1頭の繁殖期と非繁殖期の行動が観察された。飼育環境内を探索する定期的な(ステレオタイプ)行動パターンを繰り返すことが確認された。さらに、これらの行動の生起と大勢の観光客、観光客が発するきょう声、大声などが関係していることが行動分析から示唆された。
|