市場経済への移行、そのための経済改革、グローバライゼーションへの対応など、本研究が対象とした、東アジア、ラテンアメリカ、東ヨーロッパの3つの地域は多くの共通点を有している。本研究においては、これら、3地域に関する比較を、出来る限り共通のフレームワークで行うように努めた。研究分担者のひとりは、国連ECLACにおいて、ラテンアメリカ域内に関して、経済改革とその効果に関する比較分析の手法を、リフォームインデクッスを用いて開発しており、3地域の比較分析の際に参考となった。 研究の結果明らかとなった重要な点としては、とりわけ次のような点が注目される。第一に、3地域の諸国で行われている多くの政策は、グローバライゼイションへの対応のために実施されているという観点から説明できるという事である.この点を共通にしながら明らかな相違も見られる。より具体的には、ラテンアメリカでは、ネオリベラル政策の実施をかなり徹底して実施した事により、経済の近代化が進んだが、分配面と社会指標の面でマイナスの効果がみられた。一方、東アジアでは、改革の方向は同様であったが、徹底しては実施されず、社会面でのマイナスの効果は少なかった.東欧の状況は、東アジアよりもラテンアメリカにより近いといえる。指摘すべき第二の点は、広い意味での「移行過程」に先立つ初期条件が極めて重要であったという事である.これによって3地域の経済パフォーマンスのかなりの部分が説明可能である。例えば、ラテンアメリカにおける従来からの貧富の格差、東欧における企業家層の不足などは初期条件として重要である。以上挙げた点に加え、比較分析では、改革とグローバライゼーションへの対応を経て獲得された競争力、ガバナンス、中小企業の市場への参加の程度、金融改革、社会保障システムなどの分野に関する比較分析も試みた。
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