研究課題/領域番号 |
10044026
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
竹内 潔 富山大学, 人文学部, 助教授 (40212021)
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研究分担者 |
黒田 末寿 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (80153419)
篠原 徹 国立歴史民俗博物館, 民俗研究部, 教授 (80068915)
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キーワード | 文化的多様性 / 熱帯森林 / 自然保護 / アフリカ / ガボン |
研究概要 |
ガボン共和国の自然保護区およびその周辺地域での調査から、以下の知見を得た。 1.同国南部のモカラバ保護区ではこれまで本格的な学術調査がなされていなかったが、今回の保護区内の哺乳類の生息調査では、ゾウ、ゴリラの生息密度は平方キロあたり、1.5頭以上、チンパンジーは1頭以上、小・中型有蹄類は100頭を越えると推定され、真猿類10種のほか大型有蹄類の棲息も確認された。保護区の動物相に対する人為的影響は低いと考えられる。また、周辺の小集落で生活している焼畑農耕民プヌーの居住地域は狩猟許可区になっており、住民の間に保護区設立に対する不満はほとんどない。住民の生活は商品経済の影響を強く受けているが、類人猿を食することを避ける伝統的な食文化などを保持しており、希少動物種を乱獲するような事態には至っていない。バッファー・ゾーンにおけるゆるやかな規制が、保護区内の動物保護と周辺住民の文化保全を両立させている。 2.北部のカメルーン国境に近いミンケベ地域に昨年から保護区が設立されたが、保護区西部では金鉱探しにやってくる越境者が、保護区近くに居住する狩猟採集民バカをガイドとして雇い、また食糧を確保するために銃猟をさかんにおこなわせている。東部ではやはりカメルーン側の商人が、バカにゾウを狩らせて象牙をカメルーン側に運ばせており、保護区の全域でバカとガボン国森林省やWWF(世界自然保護基金)との軋礫が生じている。伝統的に遊動的な生活を営んできたバカに国境を認知させるのは困難であり、規制を強めるだけでは問題の解決にならない。国境をまたいでバカの狩猟区を設けて狩猟で得た獣肉を買い上げるなど、隣接二国間で自然保護とバカの文化保全のための共同施策を実施することが急務であると考えられる。
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