研究課題
国際学術研究
平成10年度は、〈アジア社会における地域開発と環境問題に関する環境社会学的調査研究〉継続3年の調査研究の第一年度めであり、予備的な調査研究や基礎的な資料の収集をおこなった。調査実施国(地)は、中国-フフホト市、天津市、北京市。韓国-富川市、軍浦市、ソウル市。インドネシア国-バンドン市、カラワン郡。オーストラリア国-キャンベラ市、アデレード市、シドニー市の4カ国10市、1郡で、第二年度めの統計的な調査研究と質的調査研究とを実施するための情報を、自治体、研究者、環境運動団体などへの聞き取り調査を通して収集した。巨大開発や工業化が国策として積極的に推進されている中国では、工業からの排出物により、国内のみならず地球環境悪化にも影響を与えていることが深刻に受け止められ、対策の整備に向けた努力が進行しつつあることが把握された。韓国では、民主化政策のもとで実施された自治体の首長や議員の公選が、環境問題をめぐる市民レべルでの積極的な対応を活発化する効果を持ったこと、環境悪化の状態を改善する上で自治体の果たす役割が急浮上しつつある傾向が把握された。第一次産業の比率が依然として高いが、農村地帯における漁業の組織化が進行しているイントドネシアでは、前大統領時代に推進された養殖漁業推進策で、マングローブ林の著しい減少と、それに付随した海面上昇や海岸浸食などの環境悪化、コミュニティとしての産業の崩壊の事態などが把渥された。それぞれの国の環境問題に関連して、日本の影響が、程度の差はあるものの、つねに指摘されたことであった。また、オーストラリア国についても、アジア諸国との比較の視点で、本報告書執筆後に現地調査を行なうが、この国においては、先住民族の環境問題と、これに関連したオーストラリアの開発や環境保全の対策、環境運動との関連などが特徴的であると予測している。
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