ガラス的な系におけるゆらぎに関する統計物理学

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10044064
• 研究種目: 国際学術研究
• 応募区分: 共同研究
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 高山 一 東京大学, 物性研究所, 教授 (40091475)
• 研究分担者: BOUCHAUD J.P サークレー原子核研究所, 主任研究官 ; CAMPBELL I.A パリ南大学, 教授 ; ORBACN R カリフォルニア大学, リバーサイド校, 教授 ; 根本 幸児 北海道大学, 大学院:・理学研究科, 助教授 (60202248) ; 西森 秀稔 東京工業大学, 理学部, 教授 (70172715)
• キーワード: ガラス的な系 / スピングラス / エイジング現象 / ドメイン成長 / ガラス転移 / 階層的自由エネルギー構造 / 動的平均場理論 / スピングラス相転移

研究概要

通常ガラスやスピングラスなどの競合ランダム系は、エイジング現象などきわめて長い時間スケールのゆらぎに起因する多様な緩和現象を示す。本研究では、このようなガラス的な系における‘長時間ゆらぎ'の統一的な理解を目指して、フランス、米国、日本の研究者が共同して研究を進めた。それぞれの分野で個別的な研究成果を得るとともに、フランスグループ主催による全体研究集会をパリ郊外で開催し、研究成果についての集中的な議論を行った。
今年度得られた具体的成果のうち主なものは以下の通りである。
1)希薄磁性合金スピングラス(SG)の熱残留磁化のエイジング現象の詳細な観測から、エイジング過程における(準)平衡ドメインサイズの成長を実験的に捉えることに初めて成功した(Orbach)。その結果は、SG理論模型に関する数値解析の結果と定量的にも一致している。2)前項の結果を踏まえ、ドメインサイズ成長と系のエネルギー緩和の相関などエイジング過程に関する詳細な数値解析を行ない、(準)平衡ドメインの成長という視点からエイジング現象の幾つかの側面が統一的に理解されることを明らかにした(高山)。3)通常ガラスのガラス転移以下の低温領域においても同様な考え方で理解できるエイジング現象が生じていることが明らかにされた(Bouchaud)。4)熱残留磁化のエイジング現象に対して、階層的自由エネルギー構造をもつ系の緩和現象として捉えた場合の振舞いを数値的に(根本)、また、量子効果を含めた動的平均場理論によって解析的に(Cug1iandolo)明らかにした。5)数値解析により、SG相転移の臨界特性が、相互作用の分布によって異なることを強く示唆する結果を得た(Campbe11)。

研究成果

• [文献書誌] L.W.Bemardi: "Fully Frustrated Ising System on a 3D Simple Cubic Lattice: Revisited" J.Phys.:Math.Gen.to appear. (1999)
• [文献書誌] R.Azuma: "Bond fluctuation method for a polymer undergoing gel electrophoresis" Phys.Rev.E. 59. 650-655 (1999)
• [文献書誌] J.Inoue: "Generalization ability of a perceptron with nonmonotonic transfer function" Phys.Rev.E. 58. 849 (1998)
• [文献書誌] H.Nishimori: "Convergence of simulated annealing using the generalized transition probability" J.Phys.A:Math.Gen.31. 5661 (1998)
• [文献書誌] T.Kadowaki: "Quantum annealing in the transverse Ising model" Phys.Rev.E. 58. 5355 (1998)
• [文献書誌] M.Sasaki: "Aging Phenomena of Magnetization in a Hierarchical Diffusion Model" J.Phys.Soc.Jpn.to appear. 68・4. (1999)
• [文献書誌] L.W.Bemardi: "The Spin Glass Transition :Exponents and Dynamics" Physica A. 257. 21 (1998)
• [文献書誌] P.O.Mari: "Ising spin glasses:Corrections to finite size scaling,freezing temperatures and critical exponents" Phys.Rev.E to appear. (1999)
• [文献書誌] A.Alergia: "Dynamics above the freezing temperature in Ising spin glasses and polymer melts" Phys.Rev.E to appear. (1999)
• [文献書誌] F.Alberici: "Aging in K_<1-x>Li_xTaO_3:a domain growth interpretation" Phys.Rev.Lett.81. 4987-4990 (1998)
• [文献書誌] K.Jonasson: "Memory and Chaos in spin glasses" Phys.Rev.Lett.81. 3243-3246 (1998)
• [文献書誌] L.F.Cugliandolo: "Quantum Aging in Mean-Field Models" Phys.Rev.Lett.80. 4979-4982 (1998)
• [文献書誌] L.F.Cugliandolo: "Real-time non-equilibrium dynamics of qunatum glassy systems" Phys.Rev.B. 59. 915-942 (1999)
• [文献書誌] Y.G.Joh: "Extraction of the Spin Glass Correlation Lengths" Phys.Rev.Lett.82. 438-441 (1999)
• [文献書誌] M.W.Rabin: "Noise probes of underlying static correlation lengths in the superconducting peak effect" Phys.Rev.B. 57. R720-R723 (1998)