本研究ではT4ファージのベースプレートの原子レベルでの構造を決定するステップとして2つの複合体について結晶化を進めた。ひとつはベースプレートウェッジの開始複合体であるgp10-gp11複合体である。この複合体はテイルピンを構成すると考えられ、6角形のベースプレートの各頂点にベースプレート平面から下に突き出る形で存在する。この複合体につき、SDS電気泳動、丸ごとのエドマン分解、超遠心沈降法を行うことによって、この複合体はgp10とgp11の3分子ずつのヘテロ6量体であることが明らかになった。既に、小さな結晶は得られているが、まだ結晶解析に耐える結晶は得られていない。他方、第2のターゲットであるgp5はこれまでにgp5-gp27が複合体として結晶化された。沈降平衡法とSDS電気泳動の結果から、この複合体は3分子のgp5と6分子のgp27を含むヘテロ9量体であり、結晶は分解能2.5A程度の回折点を与えた。現在セレノメチオニンを用いた同型置換体を作成中である。gp5はテイルリゾチームでベースプレート構成成分として必須な成分であるが、リゾチーム活性を持つドメインを有していて、感染時に宿主大腸菌のペプチドグリカンを局所的に切断して穴をあけ、テイルチューブが内膜に到達するのを可能にしていると考えられる。第3のターゲット蛋白質であるgp57Aについてはいまだに結晶が得られていないが、最近、C末端を7残基欠失した変異体蛋白質を作成し、大量発現させることに成功した。この変異体は完全長の蛋白質と同様の2次構造とオリゴマ-構造をとっていることが確認された。今後結晶化の可能性を調べる予定である。
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