研究概要 |
量子ダイナミックスが重要な役割をする現象に関して以下の研究を行った。Mn_<12>,Fe_8,V_<15>など微小分子磁性体でのヒステリシス現象における量子ダイナミックスを非断熱遷移の立場から研究し、特に、極低温での見かけ上の非断熱遷移、熱励起がある場合のパリティ効果、熱の流入のある場合の量子フェーン現象など、散逸環境中での非断熱遷移の特徴を詳しく研究した。また、分子間の双極子相互作用や核スピンからの超微細相互作用などの効果を明らかにした。(Miyashita,Saito,DeRaedt,Barbara)また、量子相関が非常に強い系での電子スピン共鳴の吸収線に関する直接計算法を開発し、双極子相互作用、異方性、ジャロチンスキー・守谷相互作用について、実験の幾何学的構造(格子の配位と静磁場、振動磁場の方向)と吸収線の関係(ダイナミカルシフト)を明らかにした。(Miyashita)さらに、不均一性のある系でのゆっくりとした緩和の特徴として、スピングラスやランダムボンド系でのダイナミックスの研究も進めた。(Young,Vincent,Kawashima,Miyashita)量子スピン系の特徴として格子系の空間的構造を反映した量子効果による新しい磁性状態として、S=1反強磁性ハイゼンベルグ模型(ハルデーン系)にS=1/2の不純物をドープした際に生じる局所磁気構造、S=1/2反強磁性ハイゼンベルグ模型(量子スピン流体)において局所的に相互作用の大きさを変えた場合に生じる磁気構造、さらにボンド交替S=1/2反強磁性ハイゼンベルグ模型(ダイマー系)においてボンド交替の欠陥のまわりに生じる磁気構造の性質について量子モンテカルロ法を用いて研究し、さらにそのダイナミックスも調べた。また、従来困難であった磁場中での量子モンテカルロ法に関するアルゴリズムの開発を行った。(Miyashita,Kawashima)さらに、これまで量子コンピューティングに関してNMRなどで用いられているスピンの動的制御に関して数値シミュレーションを行い、不安定性があることを見いだした。(DeRaedt,Miyashita)
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