研究概要 |
3つの研究成果を得た。 (1) 単一の磁性源から磁性体を合成する手法: 従来、磁性体の構築には、2種類の磁性源を混合して、(M(A)-M(B))nの交互配列を実現し磁性体を合成する手法が取られてきた。単一の磁性源から磁性体を合成する手法を見いだした。[Mn(H_2O)(salen)]CIO_4にNaCN水溶液を加えると[MnCN(salen)]の組成をもつ結晶が生成する。この化合物は、CN基の配列の特異性により、2種類のMnイオンが交互に連結した1次元構造をもつ。磁気的には、CN架橋の高スピン(S=2)と低スピン(S=1)の交互配列により説明される。磁気モーメント(S=2)をもつ1つの金属錯体から、スピンの不均化により高スピン(S=2)と低スピン(S=1)のMn(III)イオンが交互に連結して磁性体が生成したことを示している。 (2) 不完全ダブルキュウバン錯体[LMn(OH)M(bpy)]_2 の構造と磁性:マンガン(III)[MnL]^- を「錯体配位子」として用いた不完全ダブルキュウバン構造をもつ一連の四核錯体 [MnLM(OH)(bpy)]_2(M(II)=Zn,Cu,Ni,Mn) を合成した。四核ユニットにはhydroxo 二重架橋の平面二核ユニットが存在し、この上下に錯体配位子がアキシャル位方向から配位して不完全ダブルキュウバン構造を形成している。この構造をもつ化合物の磁性は、スピンフラストレイションが存在し、理論的に解釈した。また、マンガン-マンガン系は、photo-systemIIの活性部位の構造と類似している。 (3) 三脚型錯体の自然分晶:イミダゾールを含む金属錯体には、イミダゾールの脱プロトン化による水素結合形成にともなう自己組織能がある。キラルな多次元ネットワークを構築し、自然分晶を実現した。三つのイミダゾールを含む右巻きと左巻きの異性体が存在する三脚型六座シッフ塩基配位子錯体を用いた。キラルな二次元擬ハニカムシート構造を形成した。
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