研究概要 |
1,n-ビラジカルやエキシプレックスを経由する光異性反応、光転移反応、光環化付加反応の反応解析ならびに中間に生成する活性種の化学的性質ならびに直接観測を目的として、1,2-ジアリールシクロプロパンや1-ジアリールビニデンシクロプロパンの光異性化反応や光転移反応ならびに芳香環へのアルケンに光環化付加反応を検討し、以下の知見を得た。 1.p-アセチルフェニル基を1個なたは2個もつ1,2-ジフェニルシクロプロパン誘導体に光照射すると、少量の開環した1,3-ジフェニルプロペン誘導体の生成を伴いながら、速やかにシスートランス光異性化、45 : 55に光定常状態を与える。この光異性化は三重項1,3-ビラジカルを経由して進行し、ナノ秒閃光光分解法によって1,3-ビラジカルの寿命は約15nsであり、p-位の置換基効果はBr基の重原子効果を除けは非常に小さい。 2.cis-およびtrans-1ジフェニルビニリデン-2,3-ジメチルシクロプロパンに直接または三重項増感剤の存在下光照射すると、シス-トランス光異性化し、直接光照射では、50 : 50、三重項増感剤存在下では、30 : 70の光定常状態を与える。 3.ピレンやフェナントレンなどの芳香族炭化水素とケイ皮酸メチルやケイ皮ニトリルなどの電子受容性アルケンとの光反応によって、ピレンの4,5-位ならびにフェナントレンの9,10-位で(2π+2π)光環化付加体が効率よく生成する。前者は長時間光照射すると、ピレンとケイ皮酸メチルが1 : 2で付加した環化付加体が生成する。また、芳香族炭化水素とアルケンを分子内で連結した化合物に光照射すると、より効率よく(2π+2π)光環化付加反応が進行する。
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