環状の化合物が化学結合によらずに、立体的要因から連結した内部連結構造をもつ分子はその特異な構造的興味のみならず、情報をつかさどる分子素子としての可能性が考えられている。そのような内部連結構造化合物の簡便・確実・定量的を達成することは非常に重要な課題であり、その方法は新しい物質構築手法となりうる。 その目的を達成するために、我々はCu(I)錯体を用いたテンプレート法とPd(II)錯体を用いたセルフアセンブリー法とを組み合わせて、新規の内部連結構造分子の合成を検討した。テンプレート法もセルフアセンブリー法もそれぞれ内部連結分子の構築手法として利用されるが、双方を組み合わせることで内部連結構造の構築手法の一般的な手法になりうると考えたからである。 その結果、Cu(I)錯体を用いたテンプレート法とPd(II)錯体を用いたアセンブリー法とを組み合わせ、新規の内部連結構造分子を合成することに成功した。この構造は二つの環が四ケ所で交差して連結した二重ロックカテナンであることがNMR、質量分析等の結果から明らかになった。組成はPd4Cu2L4であることが示された。この構造がキラルであることが誘起CDの観測等で明らかとなった。 さらにこの分子は電気化学的にも非常に興味深い性質を示した。電気化学的な性質を調べるとCu(I)の酸化電位が顕著に上昇した。また紫外光吸収に関しても吸収極大が赤方移動(Red Shift)を示した。これはカチオニックな性質を示すPd(II)金属が骨格の中に含まれるために、Cu(I)の電気化学的性質に影響を与えたことによるものである。
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